研究課題
生活習慣病における脂質代謝異常は病態形成において重要な位置にある。我々は脂質代謝転写因子間相互作用としてCREBH-SREBP-PPARαの関連を見出した。肝臓、小腸でのCREBH欠損が過剰な栄養摂取による炎症を惹起し、全身の栄養代謝異常と炎症から生活習慣病を惹起することを想定している。本課題では栄養代謝維持の破綻から「全身複合炎症」の惹起における転写因子間および組織連関を通し生活習慣病の改善のメカニズムを解明する。本年度、以前に報告していたCREBH Tgマウスが食餌誘導性肥満を改善する分子メカニズムについて、標的をFGF21と想定し、FGF21 KOマウスと交配し、その表現型を評価した。CREBH Tgマウスで見られた脂質異常症の改善はFGF21 KOマウスとの交配で消失した。しかしながら、CREBH Tg FGF21 KOマウスでは脂肪組織の炎症の改善、グルコース応答性の改善は維持されることを明らかにし、グルコース応答性の改善は肝臓から分泌されるKisspeptinによるものである可能性を明らかにした(Sato iScience 2020)。高脂肪・高ショ糖食を長期間(1年間)負荷したCREBH KOマウスは進行した肝がんを呈した。正常マウスでは肝がんを呈することはなかった。また、CREBH KOマウスに通常食を1年間負荷しても肝がんを呈することはやはりなかった。CREBH KOマウスは過栄養に応答し、非アルコール性脂肪肝、肝炎を惹起し、肝がんにまで悪化させることを見出した。これはヒトの脂肪肝から肝ガンを発症させる病態と同じである。このような経緯を経て肝がんを発症させるマウスモデルはなく、新規の肝ガンモデルである可能性を、また、CREBHが新規のがん抑制遺伝子である可能性を見出した。将来的に、CREBHはヒトの肝がんの研究の発展に寄与できる。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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iScience
巻: 23 ページ: 100930~100930
10.1016/j.isci.2020.100930
https://www.u-tsukuba-endocrinology.jp/