研究課題
1.視交叉上核の概日リズム発振の統合制御におけるScg2の役割セクレトグラニンII遺伝子(Scg2)ノックアウト(KO)マウスは恒明条件下で概日行動リズム周期遅延が顕著に亢進する。運動覚醒の視交叉上核へのフィードバック制御によるリズム周期の短縮について,Scg2 KOマウスで減弱が見られるかを検討した。KOマウス3匹,対照マウス2匹について恒明条件下で回転輪運動 (-) 3週間 / (+) 3週間を1コースとして各個体2コース,放出赤外線検出式行動センサーを用いたモニタリングを終え,現在,行動リズムを解析中である。一方,運動覚醒効果を視交叉上核にフィードバックするNPYやセロトニンによるリズム周期遅延の補正に異常が見られるかを検討するため,時計遺伝子Period 2(Per2)にルシフェラーゼ遺伝子Lucを融合させたmPer2:LucノックインとScg2 KOの二重変異マウスを樹立し,視交叉上核培養切片の概日発光リズムの検出に成功し,現在,Scg2 KOにおける基底レベルでの異常と,Scg2産物の各種神経ペプチドによる補償を解析中である。2.肝臓における糖新生系と尿素回路酵素遺伝子の日周発現リズムの食餌栄養素による制御C57BL/6雄マウスを,12:12明暗サイクル条件下に,高タンパク質食(21%炭水化物,6%脂肪,60%カゼインあるいは大豆タンパク質),対照として低タンパク質食(66%炭水化物,6%脂肪,15%カゼインあるいは大豆タンパク質)にて1週間飼育後,4時間毎に肝臓からRNAを抽出しノザン法により,従来解析を進めた3種類の糖新生系酵素に加え,同系と連動して発現が変動する尿素回路の5種類の酵素のmRNAレベルの日周リズムを調べた。高タンパク質食では,糖新生系酵素と同様に,尿素回路酵素のmRNAレベルが,摂食期(暗期)を中心に上昇するとの予備的知見を得た。
2: おおむね順調に進展している
視交叉上核の概日リズム発振の統合制御におけるScg2の役割の究明を目的として検討を進めているScg2 KOマウスでの運動覚醒によるフィードバック制御の異常については,恒明条件下,回転輪運動有り・無し条件で放出赤外線検出式自発行動量センサーを用いた行動リズムのモニタリングを進めている。また,視交叉上核の培養切片における概日発光リズム周期を指標にした検討では,mPer2:LucノックインとScg2 KOの二重変異マウスの視交叉上核培養切片において,Scg2 KOにおける異常と,Scg2産物の各種神経ペプチドによる補償の解析を進めている。肝臓における糖新生系と尿素回路酵素遺伝子の日周発現リズムの食餌栄養素による制御については,低タンパク質食に比べ高タンパク質食では,糖新生系酵素と同様に,尿素回路酵素のmRNAレベルが,摂食期を中心に上昇するとの予備的知見を得ており,さらに,高脂肪食,高炭水化物食,絶食等についても解析中である。以上より,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
1.視交叉上核の概日リズム発振の統合制御におけるScg2の役割(1)運動覚醒によるフィードバック制御におけるScg2の役割の検討:対照群に比べScg2 KOマウスにおいて回転輪運動によるリズム周期の短縮に減弱が見られるか否か検討する。これまでに放出赤外線検出式自発行動量センサーを用いてモニターした行動リズムの解析を行い,今後,さらに個体数を増やして検討を進める。(2)視交叉上核の培養切片における概日発光リズム周期を指標にした解析:mPer2:LucノックインとScg2 KOの二重変異マウスの視交叉上核培養切片において,運動覚醒効果を視交叉上核にフィードバックする神経伝達物質であるNPYやセロトニンによる発光リズム周期遅延の補正に異常が見られるか否かを検討する。現在解析中のScg2 KOにおける基底レベルでの異常と,Scg2産物の各種神経ペプチドによる補償についての結果をふまえ,NPYやセロトニンの効果を検討する。2.肝臓における糖新生系と尿素回路酵素遺伝子の日周発現リズムの食餌栄養素による制御C57BL/6雄マウスを12:12明暗サイクル,通常食(55%炭水化物,5%脂肪,28%タンパク質[固形成分重量比])自由摂食下にて2週間飼育後,餌を各種栄養素組成変移食に変え,さらに1週間飼育後,4時間毎に肝臓からRNAを抽出しノザン法により,従来解析を進めた3種類の糖新生系酵素に加え,同系と連動して発現が変動する尿素回路の5種類の酵素のmRNAレベルの日周リズムを調べる。現在,低タンパク質食に比べ高タンパク質食では,糖新生系酵素と同様に,尿素回路酵素のmRNAレベルが,摂食期を中心に上昇するとの予備的知見を得ており,今後,厳密な統計学的解析を進める。また,高脂肪食,高炭水化物食(無タンパク質食),絶食等についても同様の検討を進める。
すべて 2017
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Neurosurgery
巻: 80 ページ: 248
10.1093/neuros/nyw026