研究課題/領域番号 |
16H03257
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
瀧口 正樹 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (40179578)
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研究分担者 |
菅波 晃子 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (10527922)
岩瀬 克郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (80322030)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生物時計 / 時間生物学 / 概日リズム |
研究実績の概要 |
1.視交叉上核の概日リズム発振の統合制御におけるScg2の役割 セクレトグラニンII遺伝子(Scg2)ノックアウト(KO)マウスは恒明条件下で概日行動リズム周期遅延が顕著に亢進する。概日リズムの全身性の中枢である視交叉上核に発現するセクレトニューリン等のScg2由来産物が神経支配する核や,視交叉上核以外でScg2遺伝子が発現し日周リズムへの関与の可能性を有する神経核を明らかにするために,CRISPR-Cas9ゲノム編集システムを用いて,稚魚が透明であるゼブラフィッシュのScg2遺伝子座にenhanced green fluorescent protein (EGFP) 遺伝子をノックインした。これまでに,F0世代の成魚を得ており,今後交配を進める。 2.肝臓における糖新生系と尿素回路酵素遺伝子の日周発現リズムの食餌栄養素による制御 C57BL/6雄マウスを,12:12明暗サイクル条件下に,通常食(55%炭水化物,5%脂肪,28%タンパク質)自由摂食にて2週間飼育後,無タンパク質食(81%炭水化物,6%脂肪,0%タンパク質),低(15%)タンパク質食(66%炭水化物,6%脂肪,15%カゼインあるいは大豆タンパク質),高(60%)タンパク質食(21%炭水化物,6%脂肪,60%カゼインあるいは大豆タンパク質)に変え,さらに1週間飼育後(対照群は通常食を1週間維持),4時間毎に肝臓からRNAを抽出しノザン法により,従来解析を進めた3種類の糖新生系酵素に加え,同系と連動して発現が変動する尿素回路の5種類の酵素のmRNAレベルの日周リズムを調べた。無タンパク質食,低タンパク質食では,通常食に比べ,尿素回路酵素のmRNAレベルが,暗期(夜行性マウスの摂食期)初期を除く多くの時間帯で低下し,一般に日周リズム性が強化された。一方,高タンパク質食では,無タンパク質食,低タンパク質食に比べ,暗期を中心に上昇し,やはり,通常食に比べ,一般に日周リズム性が強化された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概日リズム発振の統合制御におけるScg2の役割の究明を目的として,セクレトニューリン等のScg2由来産物が神経支配する核や,視交叉上核以外でScg2遺伝子が発現し日周リズムへの関与の可能性を有する神経核を蛍光観察により明らかにするため,稚魚が透明であるゼブラフィッシュのScg2遺伝子座に EGFP遺伝子をCRISPR-Cas9ゲノム編集システムを用いてノックインすることに成功した。 肝臓における糖新生系と尿素回路酵素遺伝子の日周発現リズムの食餌栄養素による制御については,無タンパク質食,低タンパク質食では,通常食に比べ,尿素回路酵素のmRNAレベルが,暗期初期を除く多くの時間帯で低下し,一般に日周リズム性が強化され,一方,高タンパク質食では,無タンパク質食,低タンパク質食に比べ,暗期を中心に上昇し,やはり,通常食に比べ,一般に日周リズム性が強化されることを示すなど,摂取タンパク質の寡多による尿素回路酵素遺伝子の日周発現リズムの制御を明らかにした。 以上より,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.視交叉上核の概日リズム発振の統合制御におけるScg2の役割-ゼブラフィッシュにおけるScg2遺伝子発現部位の検討:これまでに,Scg2遺伝子座にEGFP遺伝子をノックインしたF0世代のゼブラフィッシュ成魚を得ており,今後交配を進め,検鏡により透明な稚魚の蛍光観察を行う。 2.肝臓における糖新生系と尿素回路酵素遺伝子の日周発現リズムの食餌栄養素による制御-血清尿素窒素の日周リズムとの照合:平成30年度の研究成果と合わせ,尿素回路酵素遺伝子の日周発現リズムに対する栄養素の効果の全体像の把握に近づいており,今後,尿素回路の総体的活性の日周リズムとの照合が必要であり,血清総タンパク質・アルブミンとともに,血清尿素窒素の日周リズムを調べる。
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