研究課題
【一卵性双生児における自己抗体出現に及ぼす、ゲノム背景に依存したエピゲノム効果】収集した一卵性双生児の検体のなかから、血中自己抗体の存在が不一致で、一人が確実に陽性、一人が陰性の一卵性双生児19組と、陰性一致ペア165組、確実な陽性一致ペア20組について、DNAメチル化率とペアの遺伝背景(SNP)をビーズアレイ法を中心に網羅的に解析した。その結果、(1)不一致ペアに特異的な遺伝的背景が存在し、遺伝要因のみで自己抗体の出現が規定される場合と、環境要因で規定される場合の二通りの遺伝的背景が存在すること、(2)不一致ペア特異的な遺伝背景は、自己抗体出現の感受性遺伝子とは異なること、(3)不一致ペアの二人の間では、不一致ペア特異的遺伝子型ごとに有意なDNAメチル化率の相違が認められたこと、がわかった。このゲノム背景に特異的なエピゲノム効果は計4か所に認められた。【自己免疫性甲状腺疾患の疾患感受性への、ゲノム背景に依存したエピゲノム効果】いっぽう、この自己抗体の出現は橋本病の診断根拠であるが、橋本病とバセドウ病ではTNFA遺伝子のメチル化率に有意な相違があることがわかっただけでなく、TNFA遺伝子上のSNPの特定の遺伝子型(-1031Cキャリア)において、メチル化の相違が顕著であることも明らかとなった。さらに特定の遺伝子型では、TNFαの産生量が高いことも明らかとなり、遺伝的な産生能と、エピゲノム変化による産生能の組み合わせが、疾患感受性や病態予後に関連している可能性を示した。以上より、疾患に有意に関係するエピゲノム変化は特定のゲノム背景において特異的であることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
特定の有病率の高い疾患や陽性率の高い自己抗体などで解析がすすんでいるが、有病率の低い疾患等で解析するにはサンプル数の不足がある。ただし、遺伝背景ごとにエピゲノム情報を比較する手法を確立したことは大きな進捗と考える。
ゲノム背景ごとにエピゲノム情報の効果が異なることから、GWASでゲノム情報ごとに感受性がスコア化できる疾患や形質において、一卵性双生児で実際に妥当性の検証を行い、形質が一致しないゲノム背景や不一致の原因となるエピゲノム要因などの環境要因を探索する。
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