研究課題/領域番号 |
16H03264
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研究機関 | 名古屋学芸大学 |
研究代表者 |
下方 浩史 名古屋学芸大学, 大学院栄養科学研究科, 教授 (10226269)
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研究分担者 |
大塚 礼 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, NILS-LSA活用研究室, 室長 (00532243)
丹下 智香子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, NILS-LSA活用研究室, 研究員 (40422828)
西田 裕紀子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, NILS-LSA活用研究室, 研究員 (60393170)
大藏 倫博 筑波大学, 体育系, 准教授 (60396611)
安藤 富士子 愛知淑徳大学, 健康医療科学部, 教授 (90333393)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サルコペニア / フレイル / コホート研究 / 運動 / 栄養 / 認知機能 / 抑うつ / 老年症候群 |
研究実績の概要 |
サルコペニアやフレイルなどの老年症候群は、要支援・要介護の要因となり、日本人の健康寿命と平均寿命との差を増大させている。本研究では15年以上にわたって追跡されている無作為抽出された地域住民のコホートの3,983人を対象として、様々な運動、栄養の介入による仮想RCTを行い、サルコペニア、身体及び心理フレイル予防のストラテジー開発を目指している。 平成28年度には、地域住民コホートデータ整理及び仮想RCTのための予備解析を実施した。地域住民コホートでの第1次から第7次まで調査の結果と、その後の追跡調査のデータの整備を行い、解析のためのデータベースを構築した。特にサルコペニア診断に不可欠な二重エネルギーX線吸収法(DXA)の身体組成データのクリーニング等の基礎的なデータの整備を終了した。予備解析として、文献研究と地域住民コホートデータを用いてサルコペニア・身体及び心理フレイルの背景因子と指標の探索を行った。栄養・運動介入に関連する背景因子としては住民のコホートでのデータ解析の結果などから、栄養では特にたんぱく質、分岐鎖アミノ酸、アルギニン、ビタミンDがサルコペニア、フレイルに有用であった。地域住民コホートでは、食事の多様性が低いことが、認知機能の低下や高次生活機能低下のリスクになることが明らかになった。身体組成及び筋力の縦断的変化についての解析を行い、男性に比べて女性の方が上肢、下肢ともに加齢変化は少ないが、女性の40代でも男性の80代よりも上下肢の筋肉量は少なく、女性では筋肉量のわずかの低下でも運動に障害をきたす可能性が考えられた。アジアの基準(AWGS)で判定されたサルコペニアは死亡リスクとなることを明らかにした。また、認知機能の低下が15年間の死亡を予測すること、開放性の性格が認知機能低下を防ぐ要因となること、n3系多価不飽和脂肪酸が抑うつ予防に役立つ可能性なども示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、(1) 地域住民コホートでの第1次から第7次までサルコペニア、身体及び心理フレイルに関する調査結果と、その後の追跡調査のデータの整備を行い、解析のためのデータベースを構築する、(2) 地域住民コホートデータを用いて仮想RCTを実施するための背景因子とサルコペニア・フレイルの指標の探索を行うことを目標とした。 地域住民コホートのデータベースは、身体組成データなどサルコペニア・フレイル関連の様々なデータを中心に整備を終えた。仮想RCTを実施するための背景因子とサルコペニア・フレイルの指標の探索については、文献研究と地域住民コホートデータを用いての解析で、サルコペニア、フレイルの指標の検討をするとともに、栄養、運動、身体組成、認知機能、抑うつなど様々な背景要因についての検討を行い、縦断的な解析でサルコペニア、フレイルについての関連を明らかにした。これらの予備的な解析から、平成29年度以降の仮想RCTによる解析にて運動、栄養の介入によるサルコペニア、身体及び心理フレイル予防の具体的なストラテジーの解明を目指す準備を終えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究に引き続いて、地域住民コホートデータによる仮想RCTの解析を進める。仮想RCTによる運動と栄養の網羅的な解析により、サルコペニア、フレイルの最適な介入方法を明らかにするとともに、最終的にはサルコペニア、フレイル予防のストラテジー開発を目指す。本研究では縦断的に追跡された地域住民のコホートでの詳細な背景要因データを用いて、介入項目ごとに介入群、対照群の1:1のマッチングを行い、運動と栄養の介入の仮想的RCTを行う。 1) サルコペニア、身体フレイルに対する仮想運動介入:選定されたサルコペニア、身体フレイルの指標をエンドポイントにして、身体活動強度、生活時間調査などの身体活動の介入による仮想RCTを行って、身体活動の有用性、効果的な身体活動時間と強度、運動の種類などを明らかにする。仮想RCTの追跡期間を2年に設定し、必要に応じて4年、6年の介入期間での検討も行う。 2) サルコペニア、身体フレイルに対する仮想栄養介入:運動介入と同様に選定されたサルコペニア、身体フレイルの指標をエンドポイントにして、秤量法と写真記録法を併用した食事調査により推定した各食品摂取量、栄養素摂取量、さらに食生活習慣調査のデータから選定された介入項目を用いて対照群と介入群に分け、サルコペニア、身体フレイル予防への最適な栄養介入方法を仮想RCTにて推定する。 3) 心理フレイルと栄養素摂取量、食品摂取量、身体活動量との関連:選定された指標から心理フレイルを設定し、運動及び栄養介入についての仮想RCTを、サルコペニア・身体フレイルと同様に実施する。
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