研究課題
我が国における子どもの貧困の実態とそれがもたらす健康や学力への影響について、その媒介要因はほとんど明らかになっていない。本研究の目的は、その悉皆調査を前向きに追跡し健康状態や学力を評価し、修正可能な要因である栄養状態および非認知能力が媒介しているという仮説を検証することである。平成29年度は、平成28年度に実施したデータの解析を行い、野菜から食べることと肥満予防との関連に関する研究、子どもの睡眠の規則性と問題行動およびレジリエンスとの関連に関する研究、留守番をすることと問題行動およびレジリエンスとの関連に関する研究、子どもの自己コントロール能力と虫歯との関連に関する研究について論文化することができた。さらに、小学校1年生に悉皆調査を実施し、平成27年度に実施した小1の悉皆調査と比較することでこの2年間の政策評価を行なった。具体的には、区が学校を通じて配布・回収を行い、小学1年生(69校)(回答者は保護者)の5160名を対象とし、4208名(81.6%)から有効な回答が得られた。これまでの調査同様、①世帯年収300万円未満、②生活必需品の非所有、③支払い困難経験のうち、少なくとも一つでも該当する世帯を「生活困難世帯」として定義した。その結果、平成29年度においては21.7%の子どもがどの学年においても生活困難にあることがわかった。これは、平成27年度の実態より統計的にも有意な改善傾向にあった。さらに、野菜から食べる「ベジファースト」の割合は4.3%上昇しており、統計的にも有意であった(p<0.001)。さらに、公立保育園でベジファーストを実施している場合に、最も小学校1年生の太り気味の割合が低かった。これらの研究から、ベジファーストの肥満予防効果を明らかにすることができた。
2: おおむね順調に進展している
足立区における質問紙調査は順調に進んでいる。生体試料については学校での実施が困難であったため、卒後に実施するように計画を変更した。論文はすでに4本出ている。
今年度も足立区での調査を小4の悉皆、小6、中2のサブサンプルにおいて実施する。平成28年度の調査からの縦断調査となるので、縦断データとして解析を行う。論文執筆も精力的に進める。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Community Dentistry and Oral Epidemiology
巻: in press ページ: in press
in press
Frontiers in Pediatrics
10.3389/fped.2018.00134
Frontiers in Psychiatry
10.3389/fpsyt.2018.00192
Sleep Medicine
巻: 45 ページ: 62-68
10.1016/j.sleep.2017.12.015