研究課題/領域番号 |
16H03279
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菊地 晴久 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (90302166)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 天然物化学 / 多様性拡大抽出物 / 多様性指向型合成 / 化合物ライブラリー |
研究実績の概要 |
本研究では,天然資源抽出物に対して直接,化合物の主骨格を変化させる反応を行うことで得られる多様性拡大抽出物を利用することで,生物活性を示す可能性の高い化学構造を有した化合物群を創出することを目的とする.そのような化合物群として,ポリケチドとテルペノイドの構造を併せ持つメロテルペノイド型化合物に着目している.昨年度までにフェノール型メロテルペノイド類縁体ライブラリーの創出を行ったので,引き続き今年度はピロン型メロテルペノイド類縁体の創出を行った. 具体的には,セスキテルペン類を多く含む生薬であるガジュツ・コウブシ・ビャクジュツ・ウコンを原料として用い,その抽出物に対してジイソブチルアルミニウムヒドリドを作用させることで,抽出物中に含まれる化合物の一部のカルボニル基を還元した.つづいて,生じたアルコール性水酸基に対して,ヨードヒドロキシピロンを光延反応条件下でエーテル結合させ,さらにパラジウム触媒存在下でHeck反応を行うことで多様性拡大抽出物を得た.これを各種クロマトグラフィにより分画し,含まれる化合物を単離・構造決定した結果,10種のフェノール型メロテルペノイド類縁体を得た.これらのほとんどが新規分子骨格を有した化合物であり,多様性拡大抽出物を用いた手法が構造多様性に富んだ化合物群を得る手段として有用であることが改めて示された.得られた化合物について,種々の生物活性について in vitro におけるスクリーニングを行った.その結果,破骨細胞分化抑制作用を示す化合物1種を見いだした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までに,数種の生薬を原料とした多様性拡大抽出物を利用することで,多くの構造多様性の高いフェノール型メロテルペノイド・ピロン型メロテルペノイド類縁体を取得することができた.また,その中から破骨細胞分化に関わる生物活性物質を見いだすことにも成功している.これは,当初の研究目的通りの結果であり,本研究は順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後も,本研究の目的が達成できるよう,研究計画にもとづいて推進していく予定である.多様性拡大抽出物を利用したメロテルペノイド型化合物群の創出については,これまでに行ってきたフェノール型・ピロン型化合物だけでなく,化合物中に窒素原子を含むメロテルペノイドアルカロイド類縁体を多数取得することに主眼をおいて実施する.また得られた化合物の生物活性スクリーニングについては,ひきつづき細胞内シグナル分子に対する影響や脂質代謝や骨代謝などに関わるスクリーニングを行い,医薬品のリード化合物になり得る新規生物活性物質を見いだしていく方針である.
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