本研究では,天然資源抽出物に対して直接,化合物の主骨格を変化させる反応を行うことで得られる多様性拡大抽出物を利用することで,生物活性を示す可能性の高い化学構造を有した化合物群を創出することを目的とする.そのような化合物群として,ポリケチドとテルペノイドの構造を併せ持つメロテルペノイド型化合物に着目し,昨年度までにフェノール型メロテルペノイド・ピロン型メロテルペノイド類縁体ライブラリーの創出を行ってきている.今年度はこれらの成果をさらに拡張し,インドール骨格とテルペノイド部分を併せ持つテルペノイドアルカロイド類縁体の創出を行った. 具体的には,セスキテルペン類を多く含む生薬であるコウブシならびにガジュツを原料として用い,その抽出物に対してジイソブチルアルミニウムヒドリドを作用させることで,抽出物中に含まれる化合物の一部のカルボニル基を還元した.つづいて,生じたアルコール性水酸基に対して,酸処理したモンモリロナイトを触媒としてo-ヨードアニリンで置換し,さらにパラジウム触媒存在下でHeck反応を行うことで多様性拡大抽出物を得た.これを各種クロマトグラフィにより分画し,含まれる化合物を単離・構造決定した結果,8種のインドールテルペン型テルペノイドアルカロイド類縁体を得た.これらはいずれも新規分子骨格を有した化合物であり,多様性拡大抽出物を用いた手法が構造多様性に富んだ化合物群を得る手段として有用であることが改めて示された.
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