研究課題
本研究では、申請者らが光合成細菌より発見した光受容体BLUFタンパク質の解析を進化させ、細胞が外界の環境変化に応じて駆動する細胞内シグナル伝達の分子メカニズムを、分子から個体のレベルまで階層を跨いで包括的に理解することを目指している。また、得られた結果を基に、任意の形質を光制御する「光遺伝学」に資する情報の提供を目指している。本研究は、1)分光学的研究サブチーム、2)遺伝学・生化学的解析サブチーム、3)生理学的解析サブチーム、の3つの小グループによって進め、それらの成果を有機的に結びつけることで、研究のさらなる進展の達成を試みている。今年度のそれぞれのチームの研究により、紅色細菌のBLUF光受容体PapBおよびシアノバクテリアのBLUF光受容体PixDといった異なるBLUF光受容体間には、光反応サイクルの共通点と相違点があることが分光学的解析により見えて来た。この相違点は、下流で機能する因子との相互作用メカニズムの違いを反映していると考えられた。また、昨年度までに作成した、FLAGエピトープタグを付加した組換えPixE(PixE-FLAG)および、PixD特異的抗体を用いて、シアノバクテリアのBLUF光受容体PixDとその相互作用因子PixEの局在解析をウエスタンブロッティングにより行った結果、いずれも膜に表在している可能性が示唆された。またそのin vivoにおける相互作用の確認を行う実験を行ったところ、これらでの実験結果の再現性を確認することができた。さらに、蛍光タンパク質(GFP)融合PixD・PixE発現株を作成し、その蛍光観察の結果、これらタンパク質は細胞に偏在している可能性のあることがわかった。免疫電子顕微鏡観察を用いて、PixE-FLAGタンパク質の細胞内の詳細な局在解析を実施したところ、この局在を支持する結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、1)分光学的研究サブチーム、2)遺伝学・生化学的解析サブチーム、3)生理学的解析サブチーム、の3つの小グループによって進め、それらの成果を有機的に結びつけることで、研究のさらなる進展の達成を試みている。今年度のそれぞれのチームの研究状況を以下に記す。1)分光学的解析サブチーム(光受容体の分光学的解析):紅色細菌のBLUF光受容体PapBおよびシアノバクテリアのBLUF光受容体PixDの分光学的解析を行った。その結果、異なるBLUF光受容体間における光反応サイクルの共通点と相違点が見えて来た。相違点は、下流で機能する因子との相互作用メカニズムの違いを反映していると考えられた。2)遺伝学・生化学的解析サブチーム(光受容体の遺伝学的・生化学的解析):昨年度までに作成した、FLAGエピトープタグを付加した組換えPixE(PixE-FLAG)および、PixD特異的抗体を用いて、シアノバクテリアのBLUF光受容体PixDとその相互作用因子PixEの局在解析をウエスタンブロッティングにより行った。その結果、いずれも膜に表在している可能性が示唆された。またそのin vivoにおける相互作用の確認を行う実験を行った。その結果、これらでの実験結果の再現性を確認できた。3)生理学的解析サブチーム(光受容体の生理学的解析):免疫電子顕微鏡観察を用いて、PixE-FLAGタンパク質の細胞内の詳細な局在解析を実施した。また蛍光タンパク質(GFP)融合PixD・PixE発現株を作成し、その蛍光観察の結果、これらタンパク質は細胞に偏在している可能性のあることがわかった。
今後も、以下のサブチームを構成することで、異なる実験手法を効率良く、有機的に結びつけることで研究の推進を図る。I. 分光学的解析サブチーム(光受容体の分光学的解析):これまでに、主に紅色細菌Rhodopseudomonas palustris由来のBLUF光受容体タンパク質PapBと、シアノバクテリア由来のBLUFタンパク質PixDの解析を進めてきた。その結果、この二つのタンパク質の光反応における共通点と相違点が明らかとなってきた。相違点は、下流で働く因子の違いを反映していると考えられる。今後は、これまでに得られた成果を検証するとともに、論文として発表することを目指す。II. 遺伝学的・生化学的解析サブチーム:これでまでに、シアノバクテリアのBLUFタンパク質PixDは、PixEと相互作用することで光シグナル伝達を行い、最終的にこの菌の光走性をコントロールしていると考えられている。昨年度までに、PixEにエピトープタグを融合したPixEを発現する株の作成に成功し、ウエスタンブロッティングによって、PixEが細胞膜に局在していることが示唆されている。今後は、このことを生化学的実験により検証しつつ、その局在を明らかにしてゆく。III. 生理学的解析サブチーム:シアノバクテリア一細胞が光の方向を認識するためには、関連タンパク質が偏在しつつシグナルを発信することが必要と考えられる。このことを検証するために昨年度、GFPなどの蛍光タンパク質とPixDもしくはPixEを融合させた組換え遺伝子を作成し、これらを発現する株を得た。今年度はこれらの組換え体を用いて、GFP融合タンパク質の局在を精査し、その偏在を検証する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 産業財産権 (1件)
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