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2017 年度 実績報告書

光受容体研究の深化が照らす細胞内シグナル伝達の分子基盤

研究課題

研究課題/領域番号 16H03280
研究機関東京工業大学

研究代表者

増田 真二  東京工業大学, バイオ研究基盤支援総合センター, 准教授 (30373369)

研究分担者 塚谷 祐介  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, 研究員 (10421843)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード光受容体 / シグナル伝達 / BLUF / シアノバクテリア
研究実績の概要

本研究では、申請者らが光合成細菌より発見した光受容体BLUFタンパク質の解析を深化させ、細胞が外界の環境変化に応じて駆動する細胞内シグナル伝達の分子メカニズムを、分子から個体レベルまで階層を跨いで包括的に理解することを目標としている。また、得られた結果を基に、任意の形質を光制御する「光遺伝学」に資する情報を得ることも目標としている。

これまでに、紅色細菌Rhodopseudomonas palustris由来のBLUFタンパク質PapBとシアノバクテリア由来のBLUFタンパク質PixDの分光学的解析を進めてきた。昨年度までの結果と合わせ、BLUFタンパク質は、一般に、光シグナル変換(すなわち光サイクル反応)の分子機構においては共通性が見られるが、変換されたシグナルの分子間伝達機構には種による多様化が見られた。これは、それぞれの種が生育する光環境条件を反映していると考えられた。この考察を総説として論文化し、発表した。また、FLAGエピトープタグを融合したPixEの組換え遺伝子を発現するシアノバクテリア組換え体を用いて、これらのタンパク質の細胞内局在を観察した。またPixE-FLAGタンパク質の細胞内局在を、免疫電子顕微鏡観察によっても調べた。その結果、このタンパク質は、細胞膜の一点に、またチラコイド膜に点在していることがわかった。さらに、緑色蛍光タンパク質GFPを融合したBLUFタンパク質PixDを発現するシアノバクテリアを用いて、その局在を共焦点蛍光顕微鏡により観察することを試みたところ、PixD-GFPタンパク質は、明確に一点のスポットして細胞内に局在していることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、1)分光学的解析サブチーム、2)遺伝学・生化学的解析サブチーム、3)生理学的か解析サブチーム、の3つの小グループによって進めている。今年度の各研究チームの成果は以下の通りである。

1)分光学的解析サブチーム:これまでに、紅色細菌Rhodopseudomonas palustris由来のBLUFタンパク質PapBとシアノバクテリア由来のBLUFタンパク質PixDの分光学的解析を進めてきた。昨年度までの結果と合わせ、BLUFタンパク質は、一般に、光シグナル変換(すなわち光サイクル反応)の分子機構においては共通性が見られるが、変換されたシグナルの分子間伝達機構には種による多様化が見られた。これは、それぞれの種が生育する光環境条件を反映していると考えられた。この考察を総説として論文化し、発表した。
2)遺伝学・生化学的解析サブチーム:一昨年度に引き続き、FLAGエピトープタグを融合したPixEの組換え遺伝子を発現するシアノバクテリア組換え体を用いて、これらのタンパク質の細胞内局在を観察した。またPixE-FLAGタンパク質の細胞内局在を、免疫電子顕微鏡観察によっても調べた。その結果、このタンパク質は、細胞膜の一点に、またチラコイド膜に点在していることがわかった。
3)生理学的解析サブチーム:一昨年度に引き続き、緑色蛍光タンパク質GFPを融合したBLUFタンパク質PixDを発現するシアノバクテリアを用いて、その局在を共焦点蛍光顕微鏡により観察することを試みた。PixD-GFPタンパク質は、明確に一点のスポットして細胞内に局在していることがわかった。

今後の研究の推進方策

今後も、以下の3つのサブチームによる研究を組み合わせることで、異なる実験データを効率よく取得し、それらの解釈を有機的に結びつけたい。

1)分光学的解析サブチーム:以下の遺伝学的変異体スクリーニングで発見された光感受性が変化した変異PixDの分光学的特性を調べる。
2)遺伝学・生化学的解析サブチーム:これまでの研究により、BLUF光受容体により変換された光シグナルの分子間伝達機構には種による多様化が見られた。これは、それぞれの種が生育する光環境条件を反映していると考えられた。そこでその分子機構を探るために、PixD-PixEの光依存的相互作用の光感受性がおかしくなった変異PixDのスクリーニングを行う。具体的には、PixD遺伝子に対しエラープローンPCRによる変異導入を行い、それら変異pixD遺伝子をランダムにPixD変異シアノバクテリアに導入する。導入後、野生型が負の走行性を示す青色照射条件において、正の走行性を示す変異体を単離する。単離した株のpixD遺伝子の配列を決定し、その表現型を引き起こすアミノ酸置換を同定する。
3)生理学的解析サブチーム:シアノバクテリアは線毛の脱重合により目的の方向に移動することが知られており、この脱重合は、移動方向に集中的に行われることが知られている。この反応で働くPilBタンパク質も、移動方向に局在する。そこでPixD-GFPタンパク質の局在とPilBタンパク質との共局在解析を実施し、PixD-GFPが、シアノバクテリアの移動方向に対してどのような局在を示すのかを明らかにする。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Significance of accumulation of the alarmone (p)ppGpp in chloroplasts for controlling photosynthesis and metabolite balance during nitrogen starvation in Arabidopsis.2018

    • 著者名/発表者名
      Honoki, R., Ono, S., Oikawa, A., Saito, K. and Masuda, S.
    • 雑誌名

      Photosyn. Res.

      巻: 135 ページ: 299-308

    • DOI

      10.1007/s11120-017-0402-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Characterization of redox-active cysteine residues of persulfide-responsive transcriptional repressor SqrR.2017

    • 著者名/発表者名
      Shimizu, T., and Masuda, S.
    • 雑誌名

      Commun. Integr. Biol.

      巻: 10 ページ: e1329786

    • DOI

      10.1080/19420889.2017.1329786

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] FLUCTUATING-LIGHT-ACCLIMATION PROTEIN1, Conserved in Oxygenic Phototrophs, Regulates H+ Homeostasis and Non-Photochemical Quenching in Chloroplasts.2017

    • 著者名/発表者名
      Sato, S., Kono, M., Harada, K., Ohta, H., Takaichi, S. and Masuda, S.
    • 雑誌名

      Plant Cell Physiol.

      巻: 58 ページ: 1622-1630

    • DOI

      10.1093/pcp/pcx110.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Relative contributions of PGR5- and NDH-dependent photosystem I cyclic electron flow in the generation of a proton gradient in Arabidopsis chloroplasts.2017

    • 著者名/発表者名
      Kawashima, R., Sato, S., Harada, K. and Mausda, S.
    • 雑誌名

      Planta

      巻: 246 ページ: 1045-1050

    • DOI

      doi: 10.1007/s00425-017-2761-1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Light-induced chromophore and protein responses and mechanical signal transduction of BLUF proteins2017

    • 著者名/発表者名
      Fujisawa, T. and Masuda, S.
    • 雑誌名

      Biophys. Rev.

      巻: 10 ページ: 327-337

    • DOI

      10.1007/s12551-017-0355-6

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 植物の栄養応答における葉緑体型緊縮応答の果たす役割2017

    • 著者名/発表者名
      増田真二
    • 学会等名
      第3回 植物の栄養研究会
  • [学会発表] Identification and characterization of a novel chloroplast protein controlling non-photochemical quenching under fluctuating light2017

    • 著者名/発表者名
      Ryoichi Sato and Shinji Masuda
    • 学会等名
      8th International Conference Photosynthesis and Hydrogen Energy Research for Sustainability
    • 国際学会
  • [学会発表] Mechanism for H2S and reactive-sulfur-species recognition in cells2017

    • 著者名/発表者名
      Shinji Masuda and Takayuki Shimizu
    • 学会等名
      第59回日本植物生理学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803の光走性を制御するPixDおよびPixEの細胞内シグナル伝達機構2017

    • 著者名/発表者名
      中村広志、Annik Jakob, 小林厚子、杉本優希、Annegret Wilde、増田真二
    • 学会等名
      第59回日本植物生理学会年会

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公開日: 2023-12-25  

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