研究課題
ゼニゴケ油体中に高度に蓄積されるセスキテルペン類の細胞特異的蓄積機構を明らかにするため、テルペン合成最終ステップを触媒するテルペン合成酵素遺伝子の同定を進めた。これまでにゼニゴケテルペン合成酵素は複数同定されているが、その中でセスキテルペン合成に関与すると考えられる遺伝子をゼニゴケゲノム全体で探索した。その結果、30程度の関連遺伝子が確認された。そのうち、菌類テルペン合成酵素と相同性の高い遺伝子群はDNAレベルで95%以上の高い相同性を示した。そのうち9個は第6染色体に近接して座乗し、比較的近い過去に重複が数回起こることで遺伝子数が増したことが予想された。このうちのひとつ、MpFTPS1についてそのプロモーター配列を蛍光タンパク質遺伝子の上流につなげゼニゴケを形質転換してプロモーター活性の細胞特異性を解析した。その結果、MpFTPSプロモーターは油体細胞で特異的に活性化されることを確認した。一方で同じセスキテルペン合成酵素と考えられる遺伝子の中でMpFTPS1とは別グループの細菌タイプに属する遺伝子プロモーターについても同様の解析を行ったところ、このプロモーターは油体細胞では一切発現せず、油体細胞以外の特定の細胞でのみ発現していることを明らかにした。こうした解析から、ゼニゴケは陸上進化に伴いテルペン合成酵素を高度に重複させることでテルペン類の多様性を確保し、十分な防衛能力を獲得したこと、また、テルペン合成経路の細胞特異性を獲得することで通常の細胞とは区画化した状態で高濃度に防衛物質を蓄積する能力を得たことが推察された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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