研究課題
前年度までにビセリングビアサイド(BLS)のアグリコン、ビセリングビオライドB(BLLB)の合成法を確立した。また収率・選択性に問題があったところもある程度改善することができた。確立した合成法に基づき、BLLBの側鎖部を改変した人工誘導体を3種類合成した。ヒト腫瘍細胞に対する増殖阻害活性は、BLLBに比べ大幅に低下した。今後、破骨細胞分化阻害活性を評価する予定である。またBLSの糖部分をグルコースに変えた誘導体も合成した。他の種類の糖や極性基を導入した誘導体を合成を行っている。BLSが破骨細胞分化においても細胞質Caイオン濃度を増大させることが確認できたので、シグナル伝達経路に及ぼす影響を調べた。BLSがCREBの活性化を抑制していることがウェスタンブロットにより確認できたので、今後はそれよりも上流のPLCγ2などにBLSが及ぼす影響を調査する。一方、鎖状リポペプチドのジャハナイン(JHN)については、2種の天然類縁体を単離するとともに、3種のJHN類の全合成を達成し、構造と生物活性を確認した。JHNのビオチン標識体を調整し、HeLa細胞の抽出液についてアフィニティ精製を行ったところ、25kDa程度の標的候補タンパク質を見出した。現在、競合阻害実験などにより標的分子としての妥当性を確認している。それ以外に、海洋シアノバクテリアから発見した種々の化学構造を有する新規物質を発見・構造決定することができた。今後破骨細胞分化に及ぼす影響を評価する予定である。
2: おおむね順調に進展している
BLS, BLLBの合成法が確立し、選択性・収率に問題があったところもある程度改善することができた。これを基板として3種の人工誘導体を合成することができた。また破骨細胞分化において、BLSがCREBの活性化を抑制することが分かった。JHNについてはHeLa細胞における標的候補タンパク質を見出した。
確立したビセリングビアサイド(BLS)の合成経路に基づき、種々の誘導体を合成して構造活性相関の解析を進める。特に今後は側鎖部と糖部分に焦点をあてて人工誘導体を設計・合成する。また、BLSのRAW細胞におけるシグナル伝達経路に及ぼす影響をさらに調べて行くため、今後はCaMKIV と p- CaMKIV の抗体を購入し、RAW 細胞を使ってウ ェスタンブロッティングを行い解析を進めていく。また、SERCAと類似のカルシウムポンプをマラリア原虫が持っていることに注目し、抗マラリア活性についても評価を進める予定である。JHNについては標的候補タンパク質の妥当性を確認するため、競合阻害実験を行う。さらに酵素消化とMS/MS解析により、標的候補タンパク質を同定する。クラハイン(KHN)については、新たな標的候補分子としてプロフィビチンが得られたので、今後はsiRNA 法によるノックダウン実験 によりその妥当性を確認する。
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