海洋シアノバクテリア由来のマクロリド配糖体ビセリングビアサイド(BLS)の種々の誘導体を調製する方法を確立した。合成の中盤・終盤でのグリコシル化は困難であることがわかったため、合成の序盤で糖部位を導入した。BLS類の二つの重要中間体が合成できたので、両者を光延反応により連結した後、分子内Stilleカップリング反応により18員環を構築し、目的のBLS人工類縁体を合成する。マラリア原虫が哺乳類と類似のカルシウムポンプをもっていることに注目し、BLS類の抗マラリア活性を評価したところ、弱いながら活性を示した。今後は、BLS人工誘導体の抗マラリア活性を評価し、活性が向上しているか調べたい。また、破骨細胞分化阻害活性、ヒト正常細胞に対する毒性を評価する。 一方、鎖状ペプチドクラハイン(KHN)については、カルシウムポンプSERCA以外の標的分子が存在する可能性が高いことが分かった。そこで、合成したプローブ分子を用いて、HeLa細胞およびRAW細胞ライセートからアフィニティー精製により細胞内標的分子の探索を行った結果、標的候補分子としてプロフィビチンが得られた。今後はsiRNA法によるノックダウン実験によりその妥当性を確認する。 また、KHNの構造類縁体Jahanyne(JHN)のビオチンプローブを用いて同様の解析を進めたところ、標的候補タンパク質としてBaxおよびBcl-2を見出した。今後、SiRNA実験やJHNを用いる競合阻害実験によってその妥当性を検証する。 また、海洋シアノバクテリアから多様な化学構造をもつ新規物質をいくつか単離・構造決定することができた。その中には細胞内カルシウムイオン濃度に影響すると予想される化合物がある。今後破骨細胞分化に及ぼす影響を明らかする。また、これまでに発見してきた物質のいくつかが抗マラリア活性や抗原虫活性を示した。
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