2007年に報告した新規タンパク質翻訳後修飾であるS-グアニル化は、細胞内からのA群レンサ球菌のオートファジーによる排除において目印(分解タグ)として機能することがわかった。そこで、本研究課題では、S-グアニル化を細胞内の特定タンパク質に導入して、選択的な分解を誘起することを目指した。 特定のタンパク質にS-グアニル化を導入する手法としては、HaloTag法を用いた。モデル基質であるEGFP-HaloTagタンパク質をHeLa細胞に発現させ、塩化アルキル(HaloTagリガンド)の形で、S-グアニル化を導入したところ選択的なオートファジー分解が見られた。 しかしながら、S-グアニル化構造を含む塩化アルキルは予想外にHaloTagタンパク質との反応性が低く、分解タグの導入効率が不十分であった。このため、S-グアニル化の類似化合物を数十種類合成して、分解タグとしての構造活性相関を調査し、優れた特性を示す分解タグを複数見出した。 新たに見出した分解タグと、タンパク質や細胞小器官に結合する低分子(標的化リガンド)をリンカーで繋いだ分子を合成しその評価を行った。ウェスタンブロットによって解析すると、標的タンパク質の細胞内レベルが6-24時間後に半減することが確認できた。また、この減少が、リソソーム阻害剤で影響を受けることなどから、プロテアソーム分解ではなくオートファジーが関わることが示された。 さらに、個体寿命に関わる遺伝子を改変したモデル線虫の作成を行った。
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