オートファジーは、細胞質に存在する生体分子を分解する機構である。飢餓応答機能がよく知られているが、細胞内の有害物の除去などにも関与している。後者の機能は分解物選択性を示すと考えられているが、そのメカニズムは十分に理解されていない。研究代表者らは、S-グアニル化修飾が選択的なオートファジー分解の「タグ」となり、ポリユビキチン化を促進して選択的な基質分解を誘導することを見出した。 昨年度の分解タグに関する構造活性相関研究の結果を受けて、さらに合成検討を行い、分解活性の高い新たなタグを有するキメラ分子の合成に取り組んだ。その結果、同じ標的結合性リガンドをもつキメラ分子同士で比較した場合、1/100以下の濃度(nMレベル)で分解活性を示すことができた。通常の生物活性分子では、薬剤濃度を上げるにつれて、生物活性が大きくなることが一般的である。しかし、本年度に得たキメラ分子は、薬剤濃度を挙げると逆に標的分解活性が低下した。 このことは、キメラ分子が分解標的タンパク質、および、選択的オートファジー関連タンパク質と三元複合体を形成するためと考えることができる。 この考えを裏付けるため、「タグ」部分のみを過剰に細胞に投与したところ、8ーニトロcGMPによるオートファジー誘導を阻害した。つまり、過剰のタグは三元複合体形成を競合阻害することを意味している。 一方、in vivoでのキメラ分子の機能を評価するため、HaloTagを発現したマウスを用いて検討を開始した。分解タグを含むHaloTagリガンドを投与したところ、白血球中のHaloTagタンパク質との結合が確認できた。今後は分解について検討を行っていく。
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