研究課題/領域番号 |
16H03292
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
難波 康祐 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 教授 (50414123)
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研究分担者 |
村田 佳子 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 主席研究員 (60256047)
中山 淳 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 助教 (60743408)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ムギネ酸 / ムギネ酸・鉄錯体 / アルカリ性不良土壌 / トランスポーター / 光親和性標識 / 蛍光標識 |
研究実績の概要 |
1. これまでに、合成したムギネ酸・鉄錯体をイネの培地に添加すると、実際のアルカリ性不良土壌でもイネが正常に生育することを見出している。しかしながら、化学合成の原料が非常に高価であるため、天然物である2'-デオキシムギネ酸(DMA)を肥料として大量に供給することは未だ困難であった。昨年度までに、入手容易な原料を用いて、DMAの種々の安価誘導体を合成し、そのうちの一つPDMAが天然のDMAよりも優れた生育活性を示すことを見出した。そこで本年度では、PDMAの大量供給法の確立と実際の圃場試験の検討を行なった。従来の問題点であった、L-リンゴ酸原料の変換において実用的なエステルの還元法を開発し、原料の大量供給を可能にした。また、カラム精製を極力省略したPDMAの合成法を確立し、実際に数十グラムのPDMAの合成を達成した。得られたPDMAを用いて、実際のアルカリ性不良土壌でのイネの圃場試験を実施し、PDMAの添加が実際の圃場でも有効であることを明らかにした。
2. 昨年度までにイネの根に存在するムギネ酸・鉄錯体トランスポーターを標識するプローブの開発に成功した。本年度では、プローブ合成およびトランスポーター標識の再現性を確認し、ついで、鉄欠乏条件下と鉄十分条件下でそれぞれ生育させたイネの根において、トランスポーター標識率が異なることを明らかにした。
上記の成果を基に、国内学会発表39件、国際学会発表3件、招待講演8件の成果を得ると共に、査読付き論文4報、総説1報、著書1冊を29年度中に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までにムギネ酸の安価誘導体見出しており、本年度では圃場試験に必要な量の安価誘導体を大量合成することに成功した。これを用いて実際の圃場試験を行い、実際の圃場においても安価誘導体の投与が有効であることを明らかにできた。以上のようにして、ムギネ酸の安価誘導体が実際に肥料として有効であることを実験的に証明できたことから、研究はおおむね順調に進行していると判断できる また、昨年度に開発したムギネ酸・鉄錯体トランスポーターを標識するプローブの合成法およびトランスポーター標識法の再現性を確立した。本プローブを用いて、鉄欠乏イネと通常イネのトランスポーターの発現量や局在の違いを通常の生きたイネを用いて明らかにすることができた。以上の点から、本研究は順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
安価誘導体PDMAが肥料として実際の圃場でも有効であることが証明できたことから、今後は安価誘導体の大量供給法の確立に取り組む。具体的には、PDMAよりもさらに安価な誘導体の開発およびPDMAの合成ルートの改良に取り組む。現在までのPDMA合成法では、高価な不斉有機触媒の使用、保護基の使用、およびカラム精製を必要とする点などに未だ問題を残していることから、これらを一度に解決できる1段階合成法の開発に取り組む。 また、トランスポーター標識プローブのムギネ酸・鉄錯体トランスポーターに対する特異性を明らかにすると共に、標識されたトランスポーターがその後どのように挙動するのかについて蛍光追跡実験を行い、自然に発現したトランスポーターの挙動を明らかにする。
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