研究課題/領域番号 |
16H03295
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中島 芳浩 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (10291080)
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研究分担者 |
萩原 義久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究部門付 (50357761)
赤澤 陽子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (50549897)
加藤 太一郎 鹿児島大学, 理工学域理学系, 助教 (60423901)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生体分子計測 / miRNA / ルシフェラーゼ / 低分子抗体 |
研究実績の概要 |
昨年度に抗ルシフェラーゼ抗体ライブラリーより単離した、ブラジル産ヒカリコメツキムシ由来緑色発光ルシフェラーゼ(ELuc)に対して結合能を示す9種の抗体タンパク質(抗ELuc_VHH)を大腸菌にて発現・精製し、精製ELucタンパク質に対する発光阻害実験を行った。その結果、6種類の抗体がELucに対し40~50%の発光阻害活性を示すこと、各々のELucに対する解離定数が数十nMであることが明らかとなった。また、発光阻害における抗ELuc_VHH抗体とELucタンパク質の量比を最適化した条件では1種類のクローンがELucの発光を約70%阻害することも明らかとなった。次に、これら6種類の抗ELuc_VHH抗体のELucに対する認識領域を解析した結果、興味深いことに5種類はELucのC末端を認識し、N末端を認識する抗体は1種類であることが明らかとなった。続いて、抗ELuc_VHH抗体を2分子連結させ、ホモダイマーを形成させることで完全な発光阻害能力を発現させる検討を行った。ホモダイマーに加え、結合部位が異なる他の抗ELuc_VHH抗体とのヘテロダイマーを作製したが、顕著な阻害能力の向上は見られず、ダイマー間のスペーサー配列やモノマーの組み合わせ等に工夫が必要であることが判明した。 これらと並行し、哺乳類細胞における抗ELuc_VHH抗体によるELucの発光反応阻害について検証した。発光阻害を詳細に解析するため、ELucおよび対照ルシフェラーゼである赤色発光ルシフェラーゼSLR3が恒常的に発現、さらに上記の抗ELuc_VHH抗体がドキシサイクリン依存的に発現する6種類のマウス線維芽細胞安定細胞株を樹立した。各濃度のドキシサイクリンと発光基質D-ルシフェリン存在下で各安定細胞株のELucの発光をリアルタイムに3日間測定したが、顕著なELucの発光阻害は観察されず、抗ELuc_VHH抗体の細胞内での発現量の向上等の改善が必要であることが示唆され、当該研究の目的である細胞内発光阻害のための改善点が明確となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自に開発した緑色発光ルシフェラーゼELucに対して特異的な結合能を有し、数十nMレベルの解離定数を示す低分子抗体の導出に成功し、当該研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果より、緑色発光ルシフェラーゼELucの発光反応を効果的に阻害するための低分抗体の分子デザイン、および細胞内での中和抗体効果を発揮するための改善点が明確となり、次年度以降これらの改善点について焦点を絞り研究を実施する予定である。
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