研究課題/領域番号 |
16H03297
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河野 憲二 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 特任教授 (40134530)
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研究分担者 |
菅生 康子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 主任研究員 (40357257)
三浦 健一郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (20362535)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知神経科学 / 視覚系 / 眼球運動 |
研究実績の概要 |
私たちは、絶えず眼を動かし、空間内の様々な位置にある対象物を、網膜の内でも感度の高い中心窩に捉らえ、外界を知覚している。本研究は、眼が動く前に記憶された視覚刺激が、眼が動いた後に見える視覚刺激とどのように照合され、統合されるのかを明らかにするため、サルの高次視覚処理にかかわる脳領域からニューロン活動を記録し、様々な空間内の位置に、複雑な形態的特徴を持って存在する視覚刺激に対する反応を眼球運動前後で記録し、調べ、眼球運動と連動して移動する網膜像を視空間内で定位させ、視覚世界を脳内で再構成するための神経機構を解明することを目指している。 平成28年度は、顔刺激に選択的に反応するニューロンに注目し、固視課題を訓練したサルの下側頭葉視覚連合野から単一ニューロン活動を記録した。まず、サルが固視課題を遂行中に多種の顔刺激(様々な表情のヒト、サルの顔)を提示し反応を調べ、中から記録したニューロンが最もよく反応する顔刺激を選んだ。次に、刺激のサイズを、大、中、小と3種類に変化させ、小さいサイズの刺激でもニューロンが反応することを確認した。次に、小さい顔刺激を視野の様々な場所に提示して反応を記録し、ニューロンの受容野の正確なマッピングを行った。その結果、下側頭葉の顔ニューロンには視野全体に広がる大きい受容野を持つものと、視野中心部を含み、記録側と反対側に比較的小さい受容野を持つものがあることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下側頭葉の顔ニューロンが受容野のサイズによって2つのグループに分けられることは、新しい発見であり、視野全体に広がる受容野を持つニューロンから、顔についての大まかな分類情報(サルかヒトか)を得て、次に比較的狭い受容野のニューロンから詳細な分類情報(個体や表情)を得ることが下側頭葉の情報処理の特徴である可能性が示唆された。今後この仮説とニューロンの発火頻度の時間パターンとして情報がコードされていることがどのように関連しているかを明らかにすることで、高次視覚系の情報処理の一端を明らかにできると考ている。
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今後の研究の推進方策 |
視覚情報の時間/空間的統合機構の解明にむけ、顔刺激に選択的に反応するニューロンに注目し、固視課題を訓 練したサルの下側頭葉から単一ニューロン活動を記録する。サルが固視課題を遂行中に多種の顔刺激(様々な表 情のヒト、サルの顔)を呈示し反応を記録し、大まかな分類情報(サルかヒトか)と詳細な分類情報(個体や表情) が発火頻度の時間パターンとしてコードされていることを確認する。次に、このニューロンで受容野の正確なマッピングを行う。平成28年度に明らかにした受容野のサイズの違いと、ニューロンのコードする分類情報の関係を調べ、発火頻度の時間パターンによる大域/詳細分類コーディングの中心視と周辺視での差異を明らかにする。さらに、「サッケード運動による記憶された刺激の想起」が下側頭葉の顔ニューロンでも起こるか調べるため、サルにサッケード運動を訓練し、視野の右10度あるいは左10度にサッケードターゲットが提示さ れた時はサッケードを行い、それ以外の時は中心視野のターゲットを固視し続ける課題を行わせる。この課題遂 行中のサルの下側頭葉から顔ニューロンを記録し、視覚刺激(顔刺激)を中心視野、右10度、左10度に提示し、ニューロン活動の変化を調べる。
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