現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、転写因子の活性依存的にレポーター遺伝子の蛍光強度を変化させ、その活性を可視化することを可能にするレンチウイルスベクターを順次作成した。また、ウイルス精製プロトコールの至適化を行い、効率的かつより安価に高力価ウイルスを作成する独自プロトコールを確立した。 次に作成した、ウイルスベクターを用い、マウス海馬神経細胞の初代培養系を用いて、培養神経細胞における複数の内在転写因子の活性の定量計測を行った。高カリウムバッファーによる神経活動誘発処理後と無刺激群との内在転写因子活性の違いを解析し、処理群において、既知の神経活動依存的な転写因子CREB, EGR1, MEF2, SRFなどの活性上昇が認められた。また、上記の転写因子の他にも、有意な活性上昇や活性の低下を示す転写因子を多数同定した。また、海馬神経細胞および大脳皮質神経細胞の初代培養系にそれらを感染させ、無刺激状態の細胞における内在の転写因子活性を測定した。その結果、52種類中14種の転写因子に関して、有意な活性の違いが認められた。これら結果は、本解析系が細胞の由来による内在の転写因子活性の違いや活動に応じた活性の違いを高感度に検出できることを示す。 次に、生体脳内の転写因子活性を明らかにする目的で、マウス個体に作成した転写因子レポーターウイルスを感染させ、刺激提示後の転写因子活性の変動を解析した。培養細胞で使用したものを基に生体内細胞におけるレポーター定量法の至適化を行い、生体内の細胞においても転写因子活性を定量的に解析する手法を確立した。また、神経活動を増強した刺激後において生体内においてもCREB, MEF2, SRFなどの既知の神経活動依存的な活性を示す転写因子の活性の上昇を1細胞レベルで検出することができ、本システムが生体内細胞においても有効であることを確認した。
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