研究実績の概要 |
本研究は、7テスラMR装置の応用により、従来装置では感度・精度的に困難であった脳に内在する興奮性・抑制性神経伝達物質の非侵襲的定量計測を導入し、動的な脳ネットワーク構造を検出する基盤技術の開発から、生理的基盤の根拠に基づく脳回路モデルの構築を目的とする。このために、興奮性神経伝達物質であるグルタミン・グルタミン酸および抑制性神経伝達物質であるγアミノ酪酸(GABA)の定量的計測に耐えうる磁気共鳴スペクトル計測・解析法の開発、および高い空間分解能と時間分解能を有する脳ネットワーク解析を実現する機能的・構造的磁気共鳴画像の計測・解析技術の開発を目指す。 前年度までに最適化したMRI/MRS測定法をもとに、健常ボランティアを対象に、神経伝達物質計測、機能的・構造的脳ネットワーク画像計測を実施した。semi-LASER-CSI法、STEAM-CSI法とオフライン位相補正、ボクセル加算の適用により、代謝物質のケミカルシフトに由来するmis-registrationの補正しつつ、多点の同時計測が可能であった。これらの計測技術を基盤に、1回のMRI実験時間内に脳賦活および機能的脳ネットワーク構造の変容が報告されている系列運動学習を用いて、学習の成立過程における脳賦活強度、神経伝達物質濃度、学習前後の安静時脳機能ネットワーク構造の計測実験を7テスラMRIにて実施した。ネットワーク解析には、ICA, fECM, seed/ROI based correlation analysisを応用し、行動データ、課題fMRI、MRSによるGABA, グルタミン酸濃度との関連解析を介して、脳ネットワークの動態解析を実施した。
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