研究課題/領域番号 |
16H03309
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 勇 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 名誉教授 (80093334)
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研究分担者 |
内藤 大輔 京都大学, 農学研究科, 特定准教授 (30616016)
市川 昌広 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (80390706)
平田 昌弘 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (30396337)
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 准教授 (20324676)
甲山 治 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (70402089)
落合 雪野 龍谷大学, 農学部, 教授 (50347077)
阿部 健一 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 教授 (80222644)
赤嶺 淳 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (90336701)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地域間比較研究 / 生態資源 / 里山 / 地域再生 / 林業 / 過疎地 / パーマカルチャー / 染織 |
研究実績の概要 |
中国雲南大学尹紹亭教授を日本に招き、山田とともに京都周辺の茶業、東北の農村、被災地などを訪ね、伝統的な日本の地場産業のもつ問題点を共有し、さらに災害の跡地をみることで、日本の被災地の現状と今後の取り組みについて、共同討論を重ね、意見交換をおこなった。辺境における過疎問題は日中共通する深刻な問題であり、今後の共同研究が必要となる。 阿部は協同研究を行っているエゴ・レモス氏を東ティモールより招へいした。すべての小学校に設置を義務つけられている「学校菜園」は、教材が不足する東ティモールにおいては貴重な学びの場となっている。子どもたちは、とりわけ水と緑の大切さをそこから学ぶことができる。エゴ・レモス氏は、その活動実績から今年度KYOTO地球環境の殿堂の10周年記念特別賞を受賞し、再び来日を果たした。この機会をとらえ、すでに交流のあった福井県大野市、大分県宇佐市等で高校生・小学生を対象とした農業の大切さを再認識させるワークショップを開催した。 落合は引き続きラオスの工芸を中心に共同研究を行い、甲山は泥炭湿地林の研究を続けている。 長津は次年度の準備のために東北の森と海が関連する地域で伝統行事に参加し震災による地域文化の継承への問題点を追及している。この仕事は震災以後から始まり、現地で働くインドネシア人のモニタリングも含まれており、現在問題となっている外国人労働者の受け入れにも一石を投じるものである。海外の交流が増えたとはいえ、我が国においては外国人の取扱いについてはいまだに大きなバリアーがある。こういった課題も追及していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研のメンバーは、これまで東南アジアを中心とする海外において生態資源の攪乱を調査研究してきた日本の研究者である。海外の各地域においては、現場に近い共同研究者が存在する。これまでの地域研究の進展は彼らの知見に負うところが大きい。そして今日、海外で生起する課題と日本における地域課題の間に共通項や相関関係が認められる。そこで本研究は、これまで海外において共同生活を行ってきた協働研究者を日本に招き、日本の課題を海外での共通の課題として同じ立場で考え、双方の地域を比較し、今後の方策を考察していこうとするものである。日本の現場をともに見た海外研究者による日本の地域についての報告を得るとともに、日本人研究者は海外で得た知見をさらに深化させ、今後の共同研究に新たな方向を模索することを目的とする。これまで中国から2人、ラオスから2人、インドネシア1人、東ティモールから1人を招へいし、日本各地の現場を共に歩き、日本と共通する課題を持ち帰り、今後の協働作業を開始している。これまでの課題は、本当に現場に近い人々はパスポート取得も難しい辺境の地にいることや、日本の研究者が多忙で対応期間が限定されることが挙げられる。日本での滞在日数が限定されるため、十分なデータが取れないこともある。報告書は各国語で出版することを予定しているが、最終年度にかけて最善の方策を模索したい。分厚い記述を行ってくれている海外研究者もあり、相互乗り入れの機会を拡充するなども視野に入れながら、今後の新しい展開を期するため、より綿密に企画と調査研究を遂行していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
山田は尹紹亭とともに、中国貴州省を訪れ、かつでは最貧州に近かった地域が中央政府のてこいれによって急激に変化しつつある現状と伝統的茶業の新たな展開を調査する。 阿部は今年度もエゴ・レモス氏を招へいし「学校菜園」を教育の現場に取り入れている日本国内の小学校を訪問して、交流事業を行う。またFAOの主催する世界農業遺産に、東ティモールのコーヒー栽培を申請する準備のため、日本国内の認定地(徳島県祖谷地域、和歌山県みなべ・田辺地域など)を訪問し、現地調査を行う。 内藤はマレーシアのアランアスリの専門家と北海道のアイヌの人々との連帯をはかり、先住民問題を国際的な枠組みのなかで考察していく。 長津は南東スラウェシ州ワカトビ諸島のバジャウを招聘し「海辺に住まうこと」をテーマとして気仙沼において共同調査を行う。
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