研究課題/領域番号 |
16H03320
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
藤倉 良 法政大学, 人間環境学部, 教授 (10274482)
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研究分担者 |
中山 幹康 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (10217945)
武貞 稔彦 法政大学, 人間環境学部, 教授 (20553449)
吉田 秀美 法政大学, その他部局等, 講師 (70524304)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 移転補償 / 住民移転 / アジア / セーフガードポリシー / ダム建設 |
研究実績の概要 |
インドネシア・コトパンジャンダムの建設により移転した12村について予備調査を行った。その結果、移転先でパーム栽培に転換したムアラ・マハット・バルの平均月収が711万ルピアと他村に比較して大きく上回っていた。ジニ係数も0.29と12村中最も低い値を示した。次に高所得であったのが、マヨン・ポンカイで495万ルピアと続いている。ジニ係数も0.30とムアラ・マハット・バルに次いで低かった。3位はナマズ養殖に転換したコト・メスジットで397万ルピアであったが、ジニ係数は0.40と高い値を示した。4位以下は移転前から行っていたゴム栽培を継続した村落で、所得は200万ルピア前後に留まっていた。これら村落の現在の経済状況と移転時に受け取っていた補償金額との間に相関は見られず、補償金額よりも移転後の職業選択が村落の経済状況を分けていることが明らかになった。 日本の徳山ダムの建設によって移転した住民の中に、移転前に村外から嫁入りした女性がいた。彼女たちは「ダム嫁」と呼ばれていた。移転後の住民が生活再建を果たす上で、ダム嫁は移転先のコミュニティとの関係構築に大きな役割を果たしていたことが明らかとなった。 これまでの研究成果を Asian Journal of Environmental and Disaster Managenent 2017年第9巻第1号の特集号として発表した。研究対象となったのは、御母衣ダム、徳山ダム、ラオス・ナムテン2ダム、トルコ・アタチュルクダム、ベトナムの2ダム、スリランカ・ビクトリアダムである。ここから、移転民に対して十分な補償金が支給されなくても、低利融資が行われれば、生活再建に大きく貢献することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アジア6カ国(日本、インドネシア、ベトナム、トルコ、スリランカ、ラオス)のダムによる移転住民の生活再建状況がほぼ比較できるようになり、研究成果を発表することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
移転住民が移転先のホストコミュニティとどのように協調できるかが、移転の満足度を決める一要素である。今年度は、インドネシア・サグリンダムなどの事例を通じてホストコミュニティとの関係を深堀したい。また、引き続き、インドネシア・コトパンジャンダムの移転村の経済状況の分析を行う予定である。
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