研究課題
本研究の目的は、宗教を観光的資源として積極的に活用しようとする動きを「スピリチュアル・マーケット」の形成と進展と捉え、この理論的コンセプトを手がかりに日本やインドネシアなどの地域の現実的様相を調査・検討することで、理論的、学際的に現代社会における宗教とツーリズムとの関わりを考察した。主な研究成果は以下の二つの要約できる。(1)現代社会において、宗教は消費主義的な態度を介してツーリズムとの関係を深めている。その点で、宗教的マーケットは成長している。開発途上の諸地域国においても、近年の著しい経済的発展によって中間層を中心に消費主義的態度が滲透し、巡礼などの宗教的商品の需要が高まっている。しかし、これは伝統宗教に対するオルタナティブな宗教の需要を意味しているわけでなく、伝統宗教が中間層に受容されやすいように加工されている場合も多い。実際、日本の大手旅行社はパワースポットの積極的な商品化を行っていない。(2)「スピリチュアル・マーケット」の理論的枠組みは、(1)宗教的多元化、(2)宗教の消費者的選択、(3)宗教的商品のマーケットの形成、(4)需要側の「探求の志向性」ないし「再帰的スピリチュアリティ」の心理的状況の出現、からなっている。特に(4)の志向性は、伝統や宗教的権威など外部の準拠性の動揺がもたらす心理的不安定さと係わっており、そのため、自らの成長や自分探しを手助けするための商品の需要の基盤を構成している。その点で、「探求」という欲求の充足は、この種の商品の消費と深く関わっており、巡礼ツーリズムは、「本物の自己」の「探求」というセラピー的ニーズに応える商品と捉えることができる。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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宗教研究
巻: 92 ページ: 435-436
立教大学観光学部紀要
巻: 21 ページ: 19-36
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観光学評論
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国立民族博物館紀要
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