• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実績報告書

「人生の意味」に関する分析実存主義的研究と応用倫理学への実装

研究課題

研究課題/領域番号 16H03337
研究機関北海道大学

研究代表者

藏田 伸雄  北海道大学, 文学研究科, 教授 (50303714)

研究分担者 古田 徹也  新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (00710394)
久木田 水生  名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (10648869)
近藤 智彦  北海道大学, 文学研究科, 准教授 (30422380)
村山 達也  東北大学, 文学研究科, 准教授 (50596161)
佐藤 岳詩  熊本大学, 大学院社会文化科学研究科, 准教授 (60734019)
森岡 正博  早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80192780)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード人生の意味 / 分析実存主義 / T.Metz / ナラティヴ / 主観説と客観説 / 応用倫理学 / 自然主義と超自然主義
研究実績の概要

本年度は「人生に意味がある・ない」という発言のもつ機能や、その多義性に関する確認を行い、さらに「人生の意味」と「目的(telos)」や「幸福」との関連について、また「人生の意味」は個人的なものなのか、といった問題について検討した。さらに「人生の意味」に関して「直観」を用いる方法の妥当性、「人生の意味」に関する哲学の分析哲学的方法の適切さについて検討した。また「人生の意味」に関する哲学的な議論の原型はウィリアムズ・ジェームズにあると考えられることも明らかになった。また「人生の意味」に関する表出主義(非・実在論)、死と人生の意味といった問題について検討した。また「人生の意味」に関するナラティヴ・アプローチと「生の形」Shape of Lifeについて検討した。心理学者である連携研究者の浦田の実証的研究をその際に参考にした。
さらに人生の意味に関する規範的議論の可能性について検討するために、カント倫理学とパーフィットのOn What Mattersとの関連について検討した。
またT.メッツ(Metz)はその著書Meaning in Life(2013)等の中で「人生の意味」に関する哲学的な諸主張の整理を行っている。本年度はメッツを招聘して、彼の著書に関するワークショップを開催し、自身がfundamental theoryと呼ぶ、彼の理論について検討した。すでに研究分担者の森岡が編集するウェブジャーナルJournal of Philosophy of Life では、メッツの上掲書についての書評論文特集が組まれており、そこでは本研究の研究分担者の久木田水生や連携研究者の浦田悠、研究協力者の吉沢文武・山口尚等が執筆している。今年度はそれに対するメッツ自身によるリプライも踏まえて、そこで示されている論点と問題点を明確にすることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度は各研究分担者・連携研究者・研究協力者の今までの研究実績をもちよって、問題意識の共有を図ったが、それによって予想以上に多くの論点を明らかにすることができた。特にT.Metz氏本人をまじえた議論を行うことにより、「人生の意味」に関するメタ的分析を詳しく行うことができた。特にT.Metz氏の人生のfundamentalな要素に訴えるアプローチ、つまり他者に貢献する生を「意味のある生」と考え、人生の意味について自然主義的・実在論的にアプローチするという方法について批判的に検討することができた。これは予想以上の進展である。その中で、「分析実存主義」の方法論的妥当性や、「人生の意味」に関する議論において直観を用いることの妥当性について批判的に検討できたことも予想を上回る成果である。また「死の形而上学」との接続や、「ナラティヴ」「生の形」といった、当初は扱う予定ではなかった問題圏との関連もより明らかにすることができた。また「人生の意味」に関する表出主義(非・実在論)、生の目的と幸福、死と人生の意味、超自然主義といった問題との関連について検討した。これらの作業は研究分担者・研究協力者の努力により、予想以上に進展している。
また、本研究課題は「応用倫理学への実装」を構想しているが、Metz氏をまじえて「人生の意味」と生命倫理学との関連についても議論をすることができた。特に医師による自殺幇助との関連については蔵田が、また脳死については森岡が、さらに人間のエンハンスメントについては佐藤と長門が検討した。これによって「人生の意味」という概念の生命倫理への応用可能性と、その問題点・限界についても明らかにすることができた。「人生の意味」という概念の応用倫理への実装に関する検討は最終年度に行う予定であったが、計画よりも早く、その課題について取り組むことができた。

今後の研究の推進方策

本年度は昨年度の研究の中で明らかになった、「人生の意味」の多義性についてさらに整理する。また「人生に意味がある・ない」という表現に関する、表出主義的なアプローチや、そのコミュニケーション的機能に着目した研究を進める。
また「死の形而上学」との関連やナラティヴとの関連について、日本倫理学会でワークショップを実施して検討する(このワークショップは蔵田、研究分担者の村山・研究協力者の吉沢・長門が実施する予定である)。さらに今年度も「分析実存主義」はそもそも成立するのかといった問題や、「人生の意味」についての哲学史的検討を進める。特に「人生の意味」について欧米で議論されるようになったのは19世紀中盤と思われるが、その歴史的・思想的背景を探り、特に超自然主義との関連について検討する。
さらに今年度は「人生の意味」について規範的な主張を行いうるのか、といった問題についての検討を進める。また「人生の意味」という概念が応用倫理、特に生命倫理の関連にどの程度用いることができるのかを終末期医療等との関連から具体的に検討する。
そして「〈人生の意味〉と呼べるような価値は実在するのか」、「それは自然的な価値なのか、それとも非自然的な価値なのか」、「人間にはそのような価値を認識する能力があるのか」、「「人生の意味」は言語的なものなのか、またそれは言語によって伝達可能なものなのか」「人生の意味に関する問いは〈人生全体の意味〉に関する問いになるのか、それとも〈人生の部分の意味〉に関する問いになるのか」といった問題についてもさらに具体的な検討を進める。
上記の問題について検討するために、今年度も研究分担者・連携研究者・研究協力者による研究会を2回程度実施する。さらにそのために上記の日本倫理学会でのワークショップ以外にも、学会でワークショップを実施することを予定している。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (6件) (うち謝辞記載あり 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 半透明な心―他者とともにあることの悲劇、あるいは救いをめぐって2017

    • 著者名/発表者名
      古田徹也
    • 雑誌名

      atプラス

      巻: 31 ページ: 20-33

  • [雑誌論文] 中学生のやりがいと人生の意味との関連2017

    • 著者名/発表者名
      濱野佐代子・浦田悠
    • 雑誌名

      パーソナリティ研究

      巻: 25 (3) ページ: 244-247

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 人生の意味の心理学から生きがい研究への架橋にむけて2017

    • 著者名/発表者名
      浦田悠
    • 雑誌名

      生きがい研究

      巻: 23 ページ: 印刷中

  • [雑誌論文] 同じ山に異なる側から登る-パーフィットの定言命法理解をめぐって-2017

    • 著者名/発表者名
      蔵田伸雄
    • 雑誌名

      日本カント研究

      巻: 18 ページ: 74-88

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] フランクル『夜と霧』における人生の意味のコペルニクス的転回について2016

    • 著者名/発表者名
      森岡正博
    • 雑誌名

      The Review of Life Studies

      巻: 7 ページ: 1-19

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)利用が大学生の人生の意味と人生満足度に与える影響2016

    • 著者名/発表者名
      濱野佐代子・浦田悠
    • 雑誌名

      帝京科学大学紀要

      巻: 12 ページ: 75-81

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] The Concept of Persona in Watsuji and its Importance in Contemporary Bioethics2016

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Morioka
    • 学会等名
      Second Annual Conference for European Network of Japanese Philosophy
    • 発表場所
      Universite Libre de Bruxelles, Brussels, Belgium
    • 年月日
      2016-12-10
    • 国際学会
  • [学会発表] 「いのち」をものがたるということ2016

    • 著者名/発表者名
      森岡正博
    • 学会等名
      第22回日本臨床死生学会大会
    • 発表場所
      早稲田大学(東京都新宿区)
    • 年月日
      2016-11-19
    • 招待講演
  • [学会発表] 同じ山に異なる側から登る-定言命法の理解をめぐって2016

    • 著者名/発表者名
      蔵田伸雄
    • 学会等名
      日本カント協会第41回大会
    • 発表場所
      福島大学(福島県福島市)
    • 年月日
      2016-11-12
  • [学会発表] 現代の英米圏の倫理学における運の問題2016

    • 著者名/発表者名
      古田徹也
    • 学会等名
      日本倫理学会第67回大会 主題別討議「倫理学における運の役割」
    • 発表場所
      早稲田大学(東京都新宿区)
    • 年月日
      2016-10-01
  • [学会発表] 運と幸福―ストア派・アンティオコス・キケロ2016

    • 著者名/発表者名
      近藤智彦
    • 学会等名
      日本倫理学会第67回大会 主題別討議「倫理学における運の役割」
    • 発表場所
      早稲田大学(東京都新宿区)
    • 年月日
      2016-10-01
  • [学会発表] トロッコ問題と原爆投下2016

    • 著者名/発表者名
      森岡正博
    • 学会等名
      応用哲学会第8回年次大会
    • 発表場所
      慶應義塾大学(東京都港区)
    • 年月日
      2016-05-07
  • [学会発表] まんがで哲学を表現する可能性―まんが原画を描いた経験から2016

    • 著者名/発表者名
      森岡正博
    • 学会等名
      応用哲学会第8回年次大会シンポジウム「哲学は視覚イメージ化できるのか─多様な媒体を通した表現のあり方を探る」
    • 発表場所
      慶應義塾大学(東京都港区)
    • 年月日
      2016-05-07
  • [学会発表] レジリエンスを育成するナラティヴ・レッスン―負の体験からしなやかに復活する方法―2016

    • 著者名/発表者名
      やまだようこ・浦田悠・神崎真実・松嶋秀明・川島大輔
    • 学会等名
      日本発達心理学会第27回大会関連団体企画シンポジウム
    • 発表場所
      北海道大学(北海道札幌市)
    • 年月日
      2016-05-01
  • [学会発表] ライフサイクルの関係性から死生を読み解く―死生心理学の展開(1)2016

    • 著者名/発表者名
      近藤恵・川島大輔・安田裕子・白神敬介・岡本祐子・浦田悠
    • 学会等名
      日本発達心理学会第27回大会自主シンポジウム
    • 発表場所
      北海道大学(北海道札幌市)
    • 年月日
      2016-04-29
  • [図書] 川島大輔・近藤恵編『はじめての死生心理学』「第13章 量的研究法」を執筆2016

    • 著者名/発表者名
      浦田悠
    • 総ページ数
      312(231-245)
    • 出版者
      新曜社
  • [図書] 松島公望・川島大輔・西脇良編『宗教を心理学する―データから見えてくる日本人の宗教性―』 「第2章 それからを生きるための宗教―阪神淡路大震災からのメッセージ―」を執筆2016

    • 著者名/発表者名
      浦田悠
    • 総ページ数
      220(45-60)
    • 出版者
      誠信書房

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi