研究課題
本年度も一昨年度に引き続き「人生の意味」に関する著作があるT.Metz、さらに「反出生主義」を主張し、分析実存主義を提唱しているD.Benatarを招聘した。この二人を囲んで北海道大学で研究分担者・研究協力者による研究会を実施し、さらにこの二名を基調報告者とする国際会議を開催した。国際会議には国内外から70名が参加し、約40人が発表した。この研究会と国際会議を通じて、分析実存主義の全体像、特に「人生の意味」に関する議論と、死の形而上学、反出生主義との関連が明確になった。反出生主義とは、快と苦痛は対称的ではなく、苦痛の存在を考えれば「子をつくるべきではない」という主張である。Benatarは2017年にHuman Predicamentという著書を刊行しており、そこでは「人生の意味」に関する近年の議論も踏まえて反出生主義を提唱している。反出生主義は常識に反する主張のように思われるが、Benatarの主張は極めて緻密かつ論理的であり、複数の方法でその正当化が試みられている。例えば反出生主義は宇宙の広大さを考えたときに感じられるペシミズムの観点からも、効果的利他主義の観点からも正当化可能である。これらの分析を通じて、反出生主義とは子をつくる場面での反省の必要性として理解可能であることが明らかになった。また研究代表者の藏田は「客観的な規範に従って生きることは人生の意味を奪うのか」という問題を扱い、「主観説」と「客観説」の区別の問題点を明らかにした。さらに「人生の意味」の多義性について検討し、この語には、生きているという実感や充実感、人生全体の意図・目的・計画、神や運命が与えた目的、生の原因や根拠、自分が生みだしている利益や効用・社会への貢献、他人に与えられる教訓、「生命」の価値、ある種の内在的価値、人生の全ての悩みを解消する根本原理といった意味があることを明らかにした。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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哲学年報(北海道哲学会)
巻: 第64号 ページ: 印刷中
European Journal of Japanese Philosophy
巻: Vol.3 ページ: 245-262
現代生命哲学研究
巻: 第7号 ページ: 107-119
教養教育と統合知
巻: - ページ: 176-196