研究課題/領域番号 |
16H03344
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
出口 康夫 京都大学, 文学研究科, 教授 (20314073)
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研究分担者 |
藤川 直也 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (40749412)
大森 仁 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD) (50771036)
大西 琢朗 京都大学, 文学研究科, 教務補佐員 (50773529)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分析アジア哲学 / 真矛盾主義 / 非古典論理 / パラコンシスタント論理 / インド仏教思想 / 中国仏教思想 / 道元思想 / 京都学派哲学 |
研究実績の概要 |
ジャイナ教思想・清弁(ヴァーヴィベーカ)の否定概念・三論思想・天台思想・道元の哲学・京都学派(西田幾多郎・西谷啓治)の哲学を対象とする分析アジア哲学的分析を進めるとともに、真矛盾主義とパラコンシスタント論理をより強化・洗練する作業に取り組んだ。また研究成果を発信する英語ホームページの構築や、国際研究ネットワークを更に展開する試みも行なった。 具体的には、研究代表者・出口と分担者・大森による清弁の否定概念を現代論理学の非古典的否定概念を用いて分析する国際ワークショップ招待発表(5月)と国際会議発表(8月)を行なった。また出口は海外研究協力者・Graham Priest, Jay Garfield, Robert Sharf との共著研究を引き続き進め、四者による共著の三論思想・天台思想・西田の後期哲学に関する諸チャプターの執筆を進めるとともに、天台思想に関する英文論文を公刊した。この共同研究の一環として、12月中旬にカリフォルニア大学バークレー校で共同討議を行なった。 研究分担者・大西はジャイナ教の論理に対する現代論理的分析、藤川は西田・西谷の哲学に対する現代形而上学的分析を試み、その成果を国際会議で発表した(8月)。 研究代表者が研究代表を兼務する『課題設定による先導的人文学』「道元の思想圏:分析アジア哲学的アプローチ」プロジェクトが2月から開始されたことに伴い、同プロジェクトとの共催で道元思想の研究にも取り組み、3月に二回にわたる国際読書会と講演会一回を開催した。 真矛盾主義とパラコンシスタント論理の研究の一環として、二回にわたって国際ワープショップを開催するとともに(10月・2月)、F.Berto 教授(アムステルダム)・Z.Weber教授(オタゴ)・M.Carrara 教授(パドヴァ)・D.Szmuc氏 (ブエノスアイレス) らを招き共同討議を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
課題研究全般において当初の計画以上の進展があった。まず上記「道元の思想圏」プロジェクトが新たに開始されたことにより、同プロジェクトとの共催研究会等が可能となり、アジア思想研究がより加速・強化された。 さらに国際ネットワーク構築に関しても予想以上の進展があった。具体的には、分析アジア哲学をテーマとし、研究代表者を受け入れ先研究者とする台湾の若手研究者派遣プロジェクトが5月に採択され、9月から10月にかけて台湾の二人の若手研究者が来日し、分析アジア哲学研究に加わった。またこの派遣プロジェクトに伴い、台湾からの研究者(王文方・国立政治大学教授)が1月から2月にかけて来日し、分析アジア哲学に関する共同討議を行うことができた。 一方、エディンバラ大学における台湾や香港の研究者との研究討議(5月)や南洋工科大学(シンガポール)の研究者・シンガポール国立大学の研究者との共同討議(11月・2月)に加え、当初の予定には入っていなかったタイやミャンマーの諸大学(チュラロンコーン大学・マヒドン大学・ダゴン大学・ヤンゴン大学)の研究者との共同討議(2月)を行なうことができ、分析アジア哲学の国際研究ネットワークが東南アジア大陸部に展開する足がかりをうることができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、上記の「道元の思想圏」プロジェクトや台湾の若手研究者派遣プロジェクトの採択に加え、海外協力研究者F.Casati 氏が研究代表者を受け入れ研究者とする学振外国人特別研究員に採用されるなど、本研究の推進を後押しするプロジェクト採用が国内外で相次いだ。また台湾の若手研究派遣プロジェクトに関しては、すでにその後継プロジェクトへの応募も台湾の研究者によってなされている。 本年度は、これらの新展開を踏まえて、本研究をより一層加速させる予定である。また本年度には、海外協力研究者の Jay Garfiled 教授(スミスカレッジ)が3ヶ月間、研究代表者を受け入れ教員とする客員教授として京都大学に滞在する予定もある。また同時期には、同じく海外協力研究者のRobert Shaf 教授(UCバークリー校)も国際仏教大学院大学の招きで2ヶ月東京に滞在する。本研究では、このような機会を活用し、集中的に国際的討議を行なう予定である。具体的には本年6月に、上記の滞日中の研究者に加え、本プロジェクトの海外協力研究者が集結する国際会議を開催する。 また国際研究ネットワーク構築に関しても、昨年度の進捗を踏まえた事業を実施する。具体的には、昨年度来日し、共同討議を行なった研究者を軸に、オランダ・イタリア・アルゼンチンの研究グループとの真矛盾主義とパラコンシスタント論理に関する共同研究を引き続き展開させる一方、タイやミャンマーの研究者を積極的に招聘することで、分析アジア哲学の研究ネットワークの東南アジア大陸部への更なる展開を図る。
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