研究課題/領域番号 |
16H03353
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
笠松 直 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (40510558)
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研究分担者 |
逢坂 雄美 仙台高等専門学校, その他, 名誉教授 (30152036)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 南方仏教 / ミャンマー仏教 / パーリ文献協会 / 貝葉写本 / 電子ブック / Jinalankara |
研究実績の概要 |
英国パーリ文献協会・W. Pruitt博士とともにミャンマー南部モン州タトン市サダンマジョーティカー僧院へ蔵書調査に赴いた。この調査行をもって約800本の写本のほぼ全てを撮影し終えた。なお帰国後の検査で撮影に不備(ページの抜け、手指の文字上への映りこみ等)が発見された点については、現地コーディネーターに連絡・再撮影を行った。現地との連絡は良好である。また、英国Bristol大に赴き、爾後の調査計画・カタログ出版の都合、加えて電子データベースの設置先変更の件について協議した。 以上の調査の成果については、本研究計画の性格上、単年度での発表に向かない。最終年度のカタログ出版へむけてデータの整理・整備に務める段階にある。電子ブック作成についても同様である。カタログデータとの整合性を求め、この段階では「小出し」の公表を避けた。電子処理ツールについては梵文『維摩経』テキストを使用して改良・微調整を試みた。成果物についてはmonographとして出版した。 文献研究については、11世紀スリランカの仏教史詩「Jinalankara(『勝利者の装飾』)」読解を進めた。その成果の一部は本年9月、日本印度学佛教学会・第67回学術大会のパネル発表A「東南および南アジアにおけるパーリ語文献の写本伝承」の一部として公表した。 また、僧院所蔵写本の一部(文法文献)について、研究協力者の助力を得つつ検討したが、難解であり、本研究計画内部での文献研究の拡大は困難と判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最大目的は、ミャンマー南部モン州タトン市の僧院の貝葉写本を全面的に電子化し、ウェブ上に電子図書館を実現し、そのカタログを整備するところにある。 現時点においてその前提条件である写本の悉皆撮影がなされ、史料の劣化・散逸に備える目的は基本的に果たされたと判断する。当方の手法による「電子ブック」化についても手法は確立し、作業を各個に粛々と遂行する段階にある。約800の写本の書誌データを採取してカタログの形に纏めることに時間を投下し、また僧院所蔵写本の全貌を可及的速やかに提示することに注力しようと、敢えて中間報告的な発表はなさなかった。このためもあり、本年度の学会発表・論文発表は低調だったが、研究計画・目的上やむを得ざることと考える。
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今後の研究の推進方策 |
現状の方針を堅持する。 一部写本の再撮影・書誌データ再確認等を除けば、計画の根本たる写本写真は撮影し終えた。こののちは写本写真の「電子ブック」化、カタログ整備を粛々と進めるのみであろう。 文献研究についても、大蔵経・注釈・復註、歴史・文学・歴史…と多様なジャンルの文献を含む一大蔵書群は魅力的ではあるが、本研究計画において対象とする文献を増やすのは手にあまる。「Jinalankara」のみに限るのが妥当と考える。次年度に国際会議での発表を予定しており、手堅く歩を進めるべきであろう。
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