研究実績の概要 |
本年度最大の成果は、年来実施してきたミャンマー南部モン州所在のSaddhammajotika僧院U Pho Thi図書館の蔵書調査の成果たる、同図書館蔵書目録を英国パーリ文献協会(PTS)より発刊したことにある(The Catalogue of Manuscripts in the U Pho Thi Library, Thaton, Myanmar)。 これには約800本の写本を網羅し、そのテキスト名、著者名、貝葉の葉数とサイズ、筆写年代、各写本に付されたタグ・書き込みの情報や装飾の様態などの写本情報に加え、冒頭のテキスト一部抜粋を掲載した。この際、利用者の便宜のため、ビルマ文字も付記した。さらに巻末には簡単な著者名・テキスト名索引を付した。 この調査によって採取された写本写真は、自己開発の画像処理プログラムを用いて貝葉部分のみ切り出し、高精細のPDFブックに仕立ててきた。これらは最近、ウェブ上にアップロードされ、自由にダウンロードできるようになった(サイト「Pariyatti」からアクセス可能)。従って、ネット上にU Pho Thi図書館蔵貝葉写本の全容が再現されたことになる。 以上二件によって、世界の斯界研究者は常時、同図書館蔵書の一部を、あるいは総体を検討できるようになった。これをもって本研究計画の枢要な目的は完全に達成されたものと判断する。 なお本研究の発展的課題として、調査に際して現地図書館員(等)と連携し、彼らのスキルアップを図り、写本の維持伝承の自律化を支援することを挙げていた。最終年度の出張に際しては、新規に得られた協力寺院を訪問してスキャン技法を伝え、ヤンゴンのNational Library担当者にプログラム使用法を教授したことはこの課題に応じたものである。また、さらなる調査のためネピドーのNatinonal LibraryとPTSとの交渉がなされた。
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