研究課題/領域番号 |
16H03359
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
小嶋 茂稔 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20312720)
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研究分担者 |
廣木 尚 早稲田大学, 大学史資料センター, 講師(任期付) (00756356)
田澤 晴子 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (40737160)
黒川 みどり 静岡大学, 教育学部, 教授 (60283321)
山田 智 静岡大学, 教育学部, 准教授 (90625211)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中国認識 / 史学史 / 竹内好 / 尾崎秀実 / 秋沢修二 / マルクス主義歴史学 |
研究実績の概要 |
2017年度に引き続き、戦前期の中国社会論及び東洋史学の諸成果に内在する中国認識の在り方を具体化するために、尾崎秀実の業績を中心に検討を加えた。『嵐に立つ支那』『国際関係からみた支那』『現代支那批判』『最近日支関係史』『支那社会経済論』など、戦前尾崎が単行の著書として刊行した書籍の記述内容を分析し、1)尾崎の同時代の中国の政治・社会・経済に対する認識の特徴、2)中国の歴史の展開に関する尾崎の認識、なかでも史的唯物論における世界史の基本法則的な中国史の発展のあり方やアジア的生産様式論争を踏まえて尾崎秀実がどのように中国史の展開を把握していたか、などを中心に分析を行った。その結果として、当時のマルクス主義歴史学のなかでの有力な見解の一つであった講座派の理論的枠組みに依拠して、尾崎も中国史認識を深めていたことを確認できた。また、『愛情はふる星のごとく』についても分析を加え、ゾルゲ事件で逮捕・収監された後に記された尾崎の言説と、逮捕・収監以前に公刊された尾崎の著作との比較を行うことで、尾崎の思想形成の過程を確かめることもできた。また、東洋史学の側の中国認識を確かめるため、本年度は、秋沢修二の『支那社会構成』の分析を行ったほか、戦前の『歴史学研究』や『歴史科学』等の学術雑誌に掲載された東洋史学出身の論者の研究論文のなかから本研究において分析対象とすべきものの選択に着手した。また、2017年度中に本研究の研究成果として、『竹内好とその時代 歴史学からの対話』を刊行したが、その竹内好の中国認識形成の過程を検証するため、アジア・太平洋戦争期に竹内が従軍した中国湖北・湖南地域での調査を行い、咸寧市や岳陽市・華容県などで訪問調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度中は、尾崎秀実の主要な刊行物の検討を進め、また東洋史学の分野における検討対象についての選択にも着手したが、当初の研究計画と比較すると少々遅れている。これは、竹内好に関する研究成果を公刊するのが当初の予定よりも時間がかかってしまったことが要因である。2019年度においては検討対象の文献を精選することも含めて、研究を速やかに進めるように努力する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画と比較するとやや遅れているため、2019年度においては、検討対象とする文献をいっそう精選するなどして、研究のとりまとめに向けて作業を進めていくこととしたい。
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