研究課題/領域番号 |
16H03375
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
加島 勝 大正大学, 文学部, 教授 (80214295)
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研究分担者 |
泉 武夫 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (40168274)
大島 幸代 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60585694)
長岡 龍作 東北大学, 文学研究科, 教授 (70189108)
岡林 孝作 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部, 部長 (80250380)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 器 / 舎利容器 / 舎利信仰 / アジア / 真身舎利 / 法身舎利 / 鎮壇具 / 仏塔 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、仏教が伝播したアジア地域に普遍的に存在する舎利信仰を、舎利を納める「器のかたち」とそれを埋納する方法に着目し、各地域にわたる現地調査を通して、舎利の意味の変遷と両者の相関関係を明らかにすることを目的としたものである。 1.現地調査:本研究の第3年度にあたる本年度は、初年度の北インド~ネパール、第2年度のスリランカでの現地調査に引き続き、インドネシアでの現地調査を実施した。ジャカルタ国立博物館、ソノブドヨ博物館、スラカルタ王室図書博物館(ラジャ・プスタカ博物館)等でペリピーと呼ばれる石製聖遺物入れやその内容品15件を調査することができた。 2.収集データの整理と解析:1の現地調査で得られたデータを整理し、研究代表者と研究分担者が協働して解析を行った。その結果、ペリピーには銅製壺形のものもあるが、多くは一辺が20㎝~30㎝ほどの蓋付き方形の石造品である。石材には安山岩、白石(ホワイトストーン)が用いられている。ペリピーの蓋の上面には蓮華文と思われる装飾文様が施されている例もあるが、ペリピーのほとんどは仏教関連遺跡ではなく、ヒンドゥー教寺院のリンガ・ヨニの真下の地上面に安置されていることから、地神への奉賽品を納入したものの可能性が高い。また中国の舎利石函に類似した外観を呈するもの(スラカルタ王室図書博物館蔵)もあり、中国との影響関係があるのかどうか、前年度に調査したスリランカのヤントラガラとともに今後解明すべき課題となった。 3.研究会:年度末に研究代表者及び研究分担者による研究会を開催し、問題点を整理して最終年度の調査研究に備えた。特にヤントラガラやペリピーという独特な形をした宗教器物は初年度に調査した北インドでは見当たらなかったので、最終年度には南インドを対象とした現地調査を実施し、その具体的な伝播の過程を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、仏教が伝播したアジア地域に普遍的に存在する舎利信仰を、舎利を納める「器のかたち」とそれを埋納する方法に着目し、各地域にわたる現地調査を通して、舎利の意味の変遷と両者の相関関係を明らかにすることを目的としたものである 1.現地調査:本研究の3年目にあたる本年度は、初年度の北インド~ネパール、第2年度のスリランカでの現地調査に引き続き、年度半ばに(1)インドネシアでの現地調査と年度後半に(2)日本国内での関連遺品調査を実施した。(1)では、ジャカルタの国立博物館、ジョグジャカルタのソノブドヨ博物館、スラカルタ(ソロ)のラジャ・プスタカ博物館等でペリピーと呼ばれる石製聖遺物入れやその内容品を調査することができた。ペリピーは一辺が20㎝~30㎝ほどのものが多く、蓋を具えるその基本的な形にはスリランカのヤントラガラと共通するところがあるが、ヒンドゥー教寺院のリンガ・ヨニの直下の地面に納置されることが多く、この点、仏教寺院の境内や仏像の台座下に置かれるヤントラガラとは大きく異なっている。しかし両者とも地神のために埋納された地壇具の可能性が高いことから、仏教寺院で用いられるヤントラガラがスリランカからインドネシアへ伝えられ、ヒンドゥー寺院で用いられるようになったことが推測された。(2)では、海外研究協力者である冉万里氏(中国西北大学文化遺産学院教授)を招へいし、奈良・当麻寺西塔の心柱先端から発見された舎利容器を日本側研究者と協働で調査した。その結果、同舎利容器は国内及び中国、朝鮮半島の関連遺品との比較から、7世紀末~8世紀初めに製作されたものと推定した。 2.収集データの整理と解析:1の現地調査で得られたデータを整理し、研究代表者と研究分担者が協働して解析を行った。 3.研究会:年度末に研究代表者及び研究分担者による研究会を開催し、問題点を整理して次年度に備えた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の第4年度(最終年度)となる令和元年度には、以下の調査研究を実施する。 1.海外現地調査:年度半ばに南インドにおいて①寺院址等遺跡調査と②関連遺品調査を実施する。 2.国内関連遺品調査:年度後半に日本国内において関連遺品調査を実施する。 3.収集データの整理と解析:1の海外現地調査と2の国内関連遺品調査で得られたデータを整理し、コンピュータ上に蓄積し、蓄積された調査データについて研究代表者と研究分担者が協働して解析を行なう。 4.研究会:3の収集データの整理と解析終了後、中国側研究協力者冉万里氏(西北大学文化遺産学院教授)を招へいし、研究代表者及び研究分担者の参加による研究会を行なう。本年度は本研究課題の最終年度なので、4年間の調査で得られた結果を協働で分析し意見交換を行い、問題点を整理して研究成果報告書にまとめる。
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