研究課題/領域番号 |
16H03381
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
羽田 康一 東京藝術大学, 美術学部, 講師 (30240724)
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研究分担者 |
橋本 明夫 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (10237927) [辞退]
黒川 弘毅 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (50366879)
長谷川 克義 長岡造形大学, 造形学部, 准教授 (80460319)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リアーチェの戦士 / 鑄造土 / 蝋原型 / 楕円形鑄掛け熔接 / 分鑄 / パティナ / 鑄造坑 / ペイライエウスのアルテミス |
研究実績の概要 |
3年計画の初年度。主たる研究対象はレッジョ・カラーブリア国立考古博物館所蔵のギリシアブロンズ「リアーチェの戦士AB」(紀元前5世紀中頃)である。3項目に分けて記述する。 (1) 再現制作。4月以降全期間に亙り、昨年度までに準備しておいた「リアーチェA」の樹脂原型をもとに、その右足の分鑄各部品の鑄造と楕円形鑄掛け熔接の再現実験を試みた(松本)。合金の配合、蝋=ブロンズの厚さ、熔接位置、すべて現物に近づけた。6/6に最初の鑄掛け熔接作業。2度の研究発表を挟んで試行を重ねた。 (2) 現物調査。9/8-10、ミラノの代表的な美術鑄造所、M.A.F.とBattagliaで調査。9/11-14、レッジョ博物館で「リアーチェ」の現物調査・写真撮影(羽田、松本)。新館長Malacrino、メッシーナ大学のCastrizioと、今後の共同研究について協議。10/24-27、ネパールのカトマンズ郊外ラリトプルにあるシャキャ鑄造工房を訪問(黒川、松本)。そこでの金銅仏制作法と古代ギリシアの鑄造技術との共通性が想定された。11/4-12、「リアーチェ」調査。2017/3/21-23、ネパール調査(松本)。 (3) 研究発表。9/4、アジア鑄造技術史学会の大会(岡山大学)で口頭・論文発表(松本)。11/10、メッシーナ大学(9:00-14:00)とその対岸のレッジョ博物館(17:00-19:30)で研究集会「リアーチェのブロンズ──図像学と再現実験」を開催。日本側は4名(羽田、松本、黒川、藤崎)が再現実験と科学的調査に関する5本、イタリア側はメッシーナ大学の教員4名(Castrizio, Caliri, Puglisi, Salamone)が図像学に関する4本、計9本の口頭発表。岡山とメッシーナでは「リアーチェA」の右足の分鑄3部品(後ろ半分/前半分/中指)の熔接前と熔接後のサンプルも展示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は再現制作の面で大きな進展があった。ギリシアブロンズの分鑄部品の鑄掛け熔接について世界初の再現実験に挑んで説得的な成果を得、全身像再現構築への見通しをつけることができた。また海外研究協力者たちとともに海外で研究集会を開き、2009年以降これまで続けてきた現物調査と再現制作の成果をまとめて発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目・3年目は受給額が申請した予算から大幅に削減されたため、活動が著しく制限される。他の補助金が得られれば別だが、2年目は海外現物調査はとりやめ、再現制作にほぼ専念することになる。「B」の左肩/腕/手、トルソ/左脚/陰嚢/ペニスの楕円形鑄掛け熔接、「A」の右足の大理石基台への鉛を使った据え付け、などを予定している。2017/11までには専用のウェブサイトを開設し、古代ギリシアのブロンズ彫刻についてこれまでに集めた情報、写真、考察を順次公開する。3年目には昨年度行なった研究集会の論文集(イタリア語)を刊行する予定であるが、それも他の補助金次第。
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