研究課題/領域番号 |
16H03396
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
小川 公代 上智大学, 外国語学部, 准教授 (50407376)
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研究分担者 |
川津 雅江 名古屋経済大学, 法学部, 教授 (30278387)
大石 和欣 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50348380)
吉野 由利 学習院大学, 文学部, 准教授 (70377050)
土井 良子 白百合女子大学, 文学部, 准教授 (80338566)
原田 範行 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (90265778)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 感受性 / 女子教育 / 動物愛護 / 奢侈 / ファッション / 狂気 / 消費 / 道徳 |
研究実績の概要 |
本年度はこれまで個人研究として進めてきた研究経過を踏まえて、それらを本科研の研究テーマに沿う形で共同研究として組織的に組み直した。4月24日の第1回研究会では、感受性に関係する図書についての書評会を行なった(小川・大石による報告)。今後3年間の研究計画と役割分担、研究方法を確認・確定したうえで、本年度の研究の方向性を審議した。夏から秋にかけて個別に調査を進めた。12月8日に東京大学にて開催された第2回研究会では、David Humeの専門家である犬塚元氏に講演をしていただき、それに応える形でメンバーによる「ジョンソンとヒューム」の報告があった(原田)。また、3月21日に上智大学にて開催された第3回研究会では、感受性と環境哲学の専門家である河野哲也氏に講演をしていただき、それに応える形で「ワーズワスとジョン・セルウォール」についての報告があった(小川)。 おもな研究状況および成果としては、(1) 生理学、脳科学、骨相学など唯物論的言説が女性の道徳性とどのように結びついていたか研究した。(2)この時代における感受性の不道徳性に警告を発している教育書や児童文学の感受性表象を検討した。(3) 19世紀半ばに至る文学教育の聖典化の中で感受性がどのように認知されていったのか、印刷出版文化史などの観点から綿密に調査した。(4) 19世紀前半の自由主義経済に対する批判として共感、慈善、国家財政がどのような枠組みのなかで議論されているかを同時代の文学作品のなかから浮かびあがらせた。(5) John OswaldやJoseph Ritsonらの動物愛護言説と反肉食、急進主義との関わりを考察した。(6) David Hume やAdam Smith の「共感」の概念を確認しつつ、Edgeworthをはじめとする女性教育論者の教育論を概観し、「共感の限界」がどのようにとらえられているか検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
18世紀後半から19世紀前半のイギリス女性作家たちの教育的言説における不道徳な感受性の「制御」と「浄化」を試みる言語的構造を、教育や慈善、科学、文学、植民地支配の制度化が進展する文脈に視野を広げ、教育史・社会文化史からの観点も取り入れ、ジェンダー問題として考察するのが本研究の目的である。本年度はこれまでの先行研究を整理しつつ、新たな切り口から感受性の言語的構造を分析するための資料収集を主に行ってきた。当初の研究計画通り3回の研究会を行い、各研究者がそれぞれの分担にしたがって十分な資料読み込みを行った。また、途中段階ながら成果公表も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの個人の研究成果を基にして、これまで看過されてきた資料・作品の分析と考察をさらに掘り下げ、感受性文学作品の中に不道徳な感受性を「浄化」しようとする言語的構造を読み解き、女性たちの意識と同時代のジェンダー問題や植民地支配との関係性を解明していく。平成29年度は、6月にイギリス女性作家、感受性、植民地制度・文化を専門とするイギリス・ロンドン大学(クイーンメアリ・カレッジ)のマークマン・エリス教授を招聘し、講演会を行う。また、6月には本年度第1回の研究会も開催し、エリス教授を交えて意見交換を行う予定である。9月か10月に予定されている本年度第2回の研究会では、昨年度および今年度の研究に基づいた研究発表を行う。この他、各自それぞれ分担のテーマを掘り下げ、研究会ごとに情報の共有に努める。最終年度の平成30年度には、シンポジウムを開催し、それぞれが行ってきた研究の共有、総括をする。
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