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2017 年度 実績報告書

近代イギリス女性作家たちの言語態と他者-感受性、制度、植民地

研究課題

研究課題/領域番号 16H03396
研究機関上智大学

研究代表者

小川 公代  上智大学, 外国語学部, 准教授 (50407376)

研究分担者 川津 雅江  名古屋経済大学, 法学部, 名誉教授 (30278387)
原田 範行  東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (90265778)
大石 和欣  東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50348380)
吉野 由利  学習院大学, 文学部, 准教授 (70377050)
土井 良子  白百合女子大学, 文学部, 准教授 (80338566)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード英文学 / 感受性 / 女子教育 / 医科学言説 / 植民地
研究実績の概要

平成29年度は、6月、12月、3月に定例研究会を開催した。6月に、18世紀イギリスにおける感受性文化を専門とするロンドン大学(クイーンメアリ・カレッジ)のマークマン・エリス教授を招聘し、研究会では “Sensibility and the Sentimentalism: the State of the Field”と題した講演を開催し、それとは別に18世紀英国文学文化の諸相を帝国の文脈を踏まえた講演会を組織した。12月の定例研究会では、痛みと感情のイギリス史に関する著書を出版した伊東剛史准教授(東京外国語大学)と後藤はる美准教授(東洋大学)を招き、大石和欣と土井良子がそれぞれの専門の立場からコメントした。3月の定例研究会では、冨樫剛教授(フェリス学院大学)に「抵抗の文化から共感の文化へ:宗教改革以降200年のイギリス文学史」についてお話しいただき、多くの情報と知見を得た。川津雅江と大石和欣がコメントし、有益な意見交換を行った。また、メンバー各自が海外での資料収集・調査を含む研究を遂行し、その成果として学会発表も行った。各メンバーが海外においてネットワークを構築しているが、とりわけ、大石が中心となって、今年7月に東京大学・上智大学で開催する本科研共催のRomantic Regenerations国際学会で講演予定のシェイマス・ペリー(オックスフォード大学)とティム・バリンジャー(イエール大学)とコンタクトをとっている。小川公代はトリスタン・コノリー教授(ウォータールー大学)と連携し、感受性をテーマとするオースティン小説に関する共同研究を進めている。3月にカナダに渡航し、コノリー教授と、今年7月に招聘する予定であるトロント大学アラン・ビューエル教授との打ち合わせも行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の2年目に当たる平成29年度は、1年目の研究会等で共有した枠組みに即して各メンバーがイギリスや国内で資料収集を行い、研究を進めた。小川は、植民地政策に抗する感受性言説について、科学言説とロマン主義小説を比較分析することによって検証し、またこれまで同様、ゴシック小説と科学言説についても複数の論文を発表した。川津は、ロマン主義時代の女性作家の作品を中心に、動物虐待反対の声が動物の福祉から子どもの徳育へと変容した経緯を辿るとともに、感受性とチャリティの関係を食の配分の視点から捉える研究をすすめた。大石は、18世紀における富と感受性との関係性についてチャリティを軸にした研究を続け、植民地であるダブリンにおけるチャリティと都市計画、宗教の問題について研究発表を行うと同時に、19世紀ゴシック小説の系譜を現代のサラ・ウォーターズを事例にして論文を執筆した。土井は、感受性の言説との関係について、ヒュームやオリヴァー・ゴールドスミスの歴史書や子供向けの歴史読み物を調査すると共に、背景となる18世紀の読書習慣についても調べた。吉野由利はエッジワスの作品を中心とした植民地の表象および植民地の登場人物の造型を、英米の奴隷制を取り巻く政治論争、文学作品と比較し、それぞれの作品のリアリズムの追求を考察した。平成30年度の国際学会発表に向けての準備も進めた。原田範行は、感受性を中心的なテーマとする18世紀後半から19世紀前半のイギリスにおけるマイナーな小説、詩に関する調査をおこなうとともに、17世紀後半から18世紀前半の、いわゆる小説勃興期の作品がこのロマン派の時代に受容された様子について考察した。原田は分担金は使わず返還したが、当該研究課題の平成29年度の計画を遂行するにあたり、社会・教育制度の面で研究計画が進展した。以上の成果は、平成30年度以降の研究を進めるうえでも有用であると思われる。

今後の研究の推進方策

平成30年度も、引き続き定例研究会を開催して情報や知見の共有に努めながら共同研究を進める。7月にはトロント大学よりアラン・ビューエル教授を招聘し、講演会を予定している。これによって、これまで取り組んできた感受性言語と科学制度、植民地についての知見を多く得られることを期待する。10月には本科研の共催でメアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』(1818)の刊行200周年を記念するイベントとして、上智大学でシンポジウムを開催する予定である。感受性言説とゴシック小説の専門家でもあるジェラルド・ホグル教授(アリゾナ大学)と科学言説とロマン主義文学の専門家ノア・ハーリングマン教授(ミズーリ大学)を招聘し、18世紀末から19世紀初頭にかけて発展した感受性文化のテクストでもある『フランケンシュタイン』に関して意見交換をしたい。3月にも定例研究会を開催予定である。また、最終年度に向けて、メンバー各自で論集のための執筆を進めていく。

  • 研究成果

    (26件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (8件) (うちオープンアクセス 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 7件) 図書 (5件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (2件)

  • [雑誌論文] Queer Genius and the Discourse of the Spiritual in Britain: Virginia Woolf’s Orlando (1928)2018

    • 著者名/発表者名
      Kimiyo Ogawa
    • 雑誌名

      上智ヨーロッパ研究

      巻: 10 ページ: 21-45

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 書評: 田中孝信・要田圭治・原田範行編『セクシュアリティとヴィクトリア朝文化』2018

    • 著者名/発表者名
      川津雅江
    • 雑誌名

      女性とジェンダーの歴史

      巻: 5 ページ: 76-78

  • [雑誌論文] ロマン主義文学における「科学的」人種論と宗教2017

    • 著者名/発表者名
      小川公代
    • 雑誌名

      日本英文学会第89回大会Proceedings

      巻: 89 ページ: 71-72

  • [雑誌論文] 貧者のレシピ―ハナ・モア、チャリティ、環境2017

    • 著者名/発表者名
      川津雅江
    • 雑誌名

      IVY

      巻: 50 ページ: 1-26

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Review: Devoney Looser, ed., Cambridge Companion to Women’s Writing in the Romantic Period2017

    • 著者名/発表者名
      Masae Kawatsu
    • 雑誌名

      Studies in English Literature

      巻: 59 ページ: 79-85

    • 査読あり
  • [雑誌論文] パロディ、バイタリティ、ファンタジー ―オースティンの習作「小説」試論2017

    • 著者名/発表者名
      土井良子
    • 雑誌名

      ジェイン・オースティン研究

      巻: 11 ページ: 1-29

  • [雑誌論文] 「感受性」の小説作法―『パミラ』と『トリストラム・シャンディ』のある受容をめぐって2017

    • 著者名/発表者名
      原田範行
    • 雑誌名

      英国小説研究

      巻: 26 ページ: 5-31

  • [雑誌論文] イギリス文学2017

    • 著者名/発表者名
      原田範行
    • 雑誌名

      文藝年鑑

      巻: 2017年号 ページ: 85-91

  • [学会発表] 自然への回帰とエコロジー意識ージョージ・ニコルソンを中心に2018

    • 著者名/発表者名
      川津雅江
    • 学会等名
      18世紀英文学研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] Literature and Reality in the Origin of the English Novel: Japan in the writings of George Psalmanazar, Daniel Defoe, and Jonathan Swift2018

    • 著者名/発表者名
      原田範行
    • 学会等名
      Liberlit 2017大会特別講演
    • 招待講演
  • [学会発表] ロマン主義文学における「科学的」人種論(シンポジウム:「身体・人種・人間--英語圏文学の人類学的転回」)2017

    • 著者名/発表者名
      小川公代
    • 学会等名
      日本英文学会
    • 招待講演
  • [学会発表] Scientific Curiosity in Samuel Johnson’s Rasselas and Mary Shelley’s Frankenstein2017

    • 著者名/発表者名
      Kimiyo Ogawa
    • 学会等名
      Wordsworth Summer Conference
  • [学会発表] 富とチャリティと病院――ジョージアン・ダブリンの建築物と都市開発2017

    • 著者名/発表者名
      大石和欣
    • 学会等名
      都市史学会
  • [学会発表] 貧者のレシピ―イギリス・ロマン主義時代の女性、チャリティ、環境2017

    • 著者名/発表者名
      川津雅江
    • 学会等名
      日本英文学会中部支部第69回大会
  • [学会発表] 『ガリヴァー旅行記』の世界―視覚表象、諷刺、多義性2017

    • 著者名/発表者名
      原田範行
    • 学会等名
      奈良女子大学文学部言語文化学科講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 秘められた東西交流―『ガリヴァー旅行記』と日本2017

    • 著者名/発表者名
      原田範行
    • 学会等名
      昭和女子大学国際学部英語コミュニケーション学科特殊研究講座
    • 招待講演
  • [学会発表] 実作者オースティンの誘惑―文体、描写、へそ曲がり(シンポジウム)2017

    • 著者名/発表者名
      原田範行
    • 学会等名
      日本オースティン協会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] ポカホンタスのイギリス娘たち(シンポジウム)2017

    • 著者名/発表者名
      原田範行
    • 学会等名
      日本アメリカ文学会東京支部例会
    • 招待講演
  • [図書] 英国ミドルブラウ文化研究の挑戦 (中央大学人文科学研究所研究叢書68)2018

    • 著者名/発表者名
      中央大学人文科学研究所、井川ちとせ、前協子、加藤めぐみ、小川公代、木下誠、松本朗、武藤浩史、渡辺愛子、秦邦生、見市雅俊、福西由実子、長島佐恵子、近藤直樹
    • 総ページ数
      444 (147-175)
    • 出版者
      中央大学出版部
  • [図書] ジェイン・オースティン研究の今: 同時代のテクストも視野に入れて2017

    • 著者名/発表者名
      塩谷清人、三馬志伸、皆本智美、坂田薫子、新野緑、中尾真理、松村聡子、中村祐子、海老根宏、廣田美玲、久保陽子、水尾文子、高桑晴子、新井潤美、池田裕子、小川公代、川津雅江、鈴木美津子、中村哲子
    • 総ページ数
      382 (301-318, 319-336)
    • 出版者
      彩流社
  • [図書] 文学とアダプテーションーヨーロッパの文化的変容2017

    • 著者名/発表者名
      小川公代、野崎歓、眞鍋正紀、新井潤美、秦邦生、村田真一、渡辺諒、笠間直穂子、堤康徳、吉村和明、奥彩子、ジョン・ウィリアムズ
    • 総ページ数
      384 (13-31, 285-314)
    • 出版者
      春風社
  • [図書] 現代イギリス小説の「今」 記憶と歴史2017

    • 著者名/発表者名
      河内恵子、田尻芳樹、遠藤不比人、生駒夏美、大石和欣、板倉厳一郎
    • 総ページ数
      312 (149-92)
    • 出版者
      彩流社
  • [図書] 教室の英文学2017

    • 著者名/発表者名
      佐々木徹、巽孝之、原田範行、斎藤兆史、小林久美子、阿部公彦、北和丈、中村哲子、小川公代、奥聡一郎、中井亜佐子、越智博美、丹治愛、新田啓子、新井潤美、岩田美喜、唐澤一友、井出新、アルヴィ宮本なほ子、長畑明利、武田将明、高桑晴子、秦邦生、中野学而、諏訪部浩一、中村和恵、伊藤盡、佐藤和哉、田尻芳樹、武藤浩史、後藤和彦
    • 総ページ数
      320 (iii-vii, 22-29, 73-80)
    • 出版者
      研究社
  • [備考] Sensibility Culture in the Long Eighteenth Century

    • URL

      http://chiikimap.xsrv.jp/sensibility-kaken

  • [学会・シンポジウム開催] マークマン・エリス教授特別講演: ”Sensibility, slavery and empire”(日本英文学会関東支部・明治学院大学於)2017

  • [学会・シンポジウム開催] マークマン・エリス教授との国際研究集会: "Sensibility and the Sentimentalism: the State of the Field"(科研メンバーとのパネルディスカッション上智大学於)2017

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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