研究課題/領域番号 |
16H03397
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中地 義和 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50188942)
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研究分担者 |
野崎 歓 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (60218310)
MARIANNE SIMON・O 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (70447457)
塚本 昌則 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90242081)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 詩学 / レトリック / 韻文詩 / 散文詩 / 詩的散文 / ロマン主義 / 現代性 |
研究実績の概要 |
平成29年(2017年)はフランス近現代詩の祖ボードレールの没後150年に当たることもあり、5月28日、世界のボードレール研究を牽引する海外の研究者4名と日本人研究者7名が一堂に会する国際コロキウムを東京大学文学部にて開催した。その費用の一部として本科研費を使用した。韻文詩、散文詩、批評的著作、ひいては詩人のイデオロギーや政治的立場が多角的に議論され、学生や外部聴講者の参加もあって、実り多い討論会となった。そこでの発表をもとにした論考が近い将来、フランスで出版されている国際ボードレール研究誌「ボードレール年鑑」(L'Annee Baudelaire)の一号を割いて公刊される予定である。 学術振興会外国人研究者短期招聘の枠で来日し、上記コロキウムにも参加したパリ・ソルボンヌ大学アンドレ・ギュイヨー教授によるランボー作品の受容をめぐる講演会を二つ企画し、剽窃、贋作、翻案等の問題を、実例とともに討論した。 同年10月から11月にかけて、ロマン主義文学および19世紀フランス詩を専門とする海外の研究者2名を招聘し、近代詩誕生の母胎となったロマン主義文学の基盤をめぐる研究交流を行なった。そこから一つの重要な側面が浮かび上がった。通常、客観的理性に対する主観や感情の重視、とくに恋愛賛美、民族的伝統への執着といったタームで定義されるロマン主義にはまた、当時の生理学や精神医学の動きに敏感に反応しその知見を積極的に同化する感覚主義、物質主義の側面が顕著であった事実である。実証科学が提示するこうした人間観がフランス近代詩人たちにいかなるインパクトをもちえたのかは、今後本研究を進めるに当たって重要な着眼点になり得る。 平成30年3月、ノーベル文学賞受賞作家ル・クレジオ氏を招聘し、「詩の魅力」と題する講演会・討論会を開催、時系列に規定されない詩の展開の可能性を議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
19世紀における韻文詩と散文詩の共存と相互作用の現象の検討については予想以上に進展があった。また、剽窃、翻案、詩の非時間的展開についても、集中的に議論を重ねた。他方、レトリックにおける隠喩の優勢、隠喩におけるイメージの特権化というすぐれて20世紀的現象の本格的検討は、次年度以降に持ち越された。全体としては、おおむね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、(1)詩学とレトリックの相関関係、とくに詩における隠喩の優位、隠喩におけるイメージの特権化の現象、(2)20世紀詩人たちにおける閉じられた作品としての「詩」への異議申し立ての現象、それに派生して(3)詩の翻訳、翻訳における韻律の処理の問題を検討したい。
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