研究課題/領域番号 |
16H03397
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中地 義和 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 準研究員 (50188942)
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研究分担者 |
野崎 歓 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (60218310)
MARIANNE SIMON・O 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (70447457)
塚本 昌則 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90242081)
月村 辰雄 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 名誉教授 (50143342)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 仏文学 / 詩学 / レトリック / 翻訳 |
研究実績の概要 |
平成30(2018)年度は、詩の隠喩やイメージがフランス文学の内部でどのような時代的変遷をたどってきたかという問題と合わせて、フランス詩、とくに定型詩が、言語をまたいでどのように移植されうるかを検討した。詩の翻訳の問題である。国際シンポジウム「世界文学の可能性――日仏翻訳の遠近法」において「詩を訳す―忠実さと創意」と題して、フランス韻文詩を日本語に訳す場合のイメージと韻律の処理の問題を論じた(日仏会館、4月14日)。さらに考察を加えた論考が近く論集に収録される予定である。 類似の問題意識から、2018年3月にノーベル賞作家ル・クレジオ氏が東京大学で行なった講演「詩の魅力」の翻訳・解説を通して、古今東西の世界の詩を近代フランス語への翻訳を通して論じる氏の詩の捉え方から、詩と翻訳の問題を考えた。 フランス近現代詩の異端児であると同時に創始者ともみなされてきたランボーの詩のアンソロジーの準備作業を通じて、詩の翻訳・註釈・解説の多元的解明の試みを進めた。この成果は2019年度に公刊される予定である。これと並行して、日仏会館にて一般聴講者を対象に、「ランボーの絶えざる脱皮について」と題する4回シリーズの講座で成果の一部を披露した。 20世紀の詩・小説における夢と眠りのレトリックについて、研究分担者の一人が成果をまとめて著書が刊行した。詩と視覚芸術、とくに映画との相互触発に関する日本およびフランスでのシンポジウムの組織運営、また発表を複数回行なった。そのうちのいくつかはすでに公刊され、目下公刊準備中のものもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
19世紀末から20世紀初頭における定型詩の変質、レトリックにおける隠喩の優勢については、具体例の分析を通して、おおむね予定どおり解明が進捗している。加えて、視覚芸術との関連、翻訳を通してみた詩の韻律の問題へと展望が広がりつつある。隠喩におけるイメージの特権化について、さらなる検討の余地がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究最終年度となる2019年度には、進行中の『ランボー詩集』の訳・註・解説、仏語版『ボードレール年鑑』監修等を通じて、近代詩における隠喩の変質についての検討を完結させたい。また、本研究の中核に据えた韻文と散文の相関性について、詩の翻訳の視点を加味しながら、四年間で得られた知見を整理・総合を行ないたい。
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