研究課題
本研究は、アジアにおけるexpressivesまたはideophonesと呼ばれている、日本語の擬態語・擬音語に相当するものを対象として、音・文法・意味の関わり合いを調べた。「恣意性」をめぐるソーシュールの議論を乗り越え、expressivesとは音象徴と意味が直結していると見られている。日本語の特有のものではなく、むしろアジア各地で広く分布する言語現象である。南アジア、東南アジア、東アジアという3つの地域で話されている多様な言語を通して、通時的・共時的、かつ越域的な研究を行い、多様なデータを集め分析することによって、この10年間で勢い付いてきた研究領域の理論にも貢献した。国語として使用されている言語から話者数千人しかいない希少言語まで、合計18の言語からのデータに基づいて、共同研究を行ってきた。分担者6人に加え、協力研究者9人の研究者に参加してもらった。主な研究成果は、インド東部で話されている「ムンダ語の擬音語擬態語辞典」と「南アジア言語地域におけるExpressives」という英文による論集が代表的な研究成果となる。前者は、2019年中に出版される予定で、後者は科研プロジェクトが終了した時点で順調に査読中である。音象徴という観点が主流だったこの研究領域には、形態論、意味論、語彙論から見る言語学的分析を加え、さらに言語人類学的な問いも視野に置き、新鮮な知見・洞察を提供した。又、大勢の研究者と共同研究を行うことができた結果として、日本、インド、ラオス、アメリカを繋ぐネットワークは今後も引き続きこの研究を展開することが期待される。アジアの一次言語データに基づいた、多様な地域言語文化から生まれる新たな言語観を創出することを目的とした本研究では、Expressives研究を言語学の中で、「周辺的」な位置付けから「主流」に近づけることに貢献したと思われる。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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ありあけ 熊本大学言語学論集
巻: 18 ページ: 1-26
Journal of Contemporary Asia
巻: 48(5) ページ: 783-807
10.1080/00472336.2018.1462888