研究課題/領域番号 |
16H03422
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池田 証壽 北海道大学, 文学研究科, 教授 (20176093)
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研究分担者 |
大槻 信 京都大学, 文学研究科, 教授 (60291994)
永崎 研宣 一般財団法人人文情報学研究所, 人文情報学研究部門, 主席研究員 (30343429)
鈴木 慎吾 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (20513360)
斎木 正直 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (30609037)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 篆隷万象名義 / 新撰字鏡 / 類聚名義抄 / 玉篇 / 切韻 / Unicode / オープンデータ |
研究実績の概要 |
計画の2年度(平成29年度)には、初年度に完成・公開した高山寺本『篆隷万象名義』全文テキストデータベースの点検・整備を進めるとともに、全文入力を完了した天治本『新撰字鏡』と観智院本『類聚名義抄』の点検・整備を進め、公開に向けた準備を行い、これらのデータベースの利活用に関する研究成果を公表した。 データベース設計・構築・整備を行う「DB構築班」は、『篆隷万象名義』『新撰字鏡』『類聚名義抄』の本文構造を分析し、構造化データの設計とWeb公開方法の検討を行った。Webで『篆隷万象名義』と『新撰字鏡』の全文テキストを検索して、それらに収録する掲出字の画像を表示するシステムの準備を進めた。『類聚名義抄』は本文構造が複雑であるので、専用のマークアップ・ツールを開発してタグ付けの効率化を図った。また近年、画像を公開し共有するための国際的な枠組みとしてその普及が進んでいるIIIF(International Image Interoperability Framework)に関してその利用と実装に関する研究を行い、人文科学諸分野における利活用の可能性を探った。 データベース利用・活用・評価を行う「DB活用班」は、漢字の字体・音韻・訓詁・和訓の研究に関連して、日本古辞書資料を中心に中国資料(敦煌文献等)・訓点資料も視野に入れて研究を進め、それぞれ資料としての有用性と信憑性の検討を行った。また古辞書の編纂のプロセス(出典研究)、編纂の背景事情(人的交流・文化接触)、古辞書の伝承と利用等に関する検討も進め、それぞれに論文公刊と研究発表を行った。 データベース構築に関しては、その基礎となる翻刻本文の整備・点検に力を注いだ。一方、データベースの公開と利用方法に関しては、その情報提供のための発表を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で構築・公開する「平安時代漢字字書総合データベース」は、日本語学にとどまらず、中国語学・文学、日中古典学、仏教学、情報学等の諸分野に関連するため、国内外の学会・研究会で積極的に成果公表を行った。このデータベースに関連する成果は、研究代表者に限っても、東亞文獻研究國際學術研討會(4月、中国・揚州)、EAJS2017(9月、ポルトガル・リスボン)、人文科学とコンピュータシンポジウム2017(12月、大阪)、日本漢字学会(3月、京都)で講演・発表しており、研究分担者・連携研究者・研究協力者も国内外の学会等で研究成果を積極的に公表した。また8月には本プロジェクト主催の公開シンポジウムを北海道大学で開催した。 昨年度に公開した『篆隷万象名義』全文テキストデータは、今年度も公開を継続しており、これに続く『新撰字鏡』と『類聚名義抄』の公開の準備も順調で、着実に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
計画は順調に進んでおり、3年度となる平成30年度には8月に国際シンポジウムを開催する。当初の計画では北海道大学(札幌市)で開催の予定であったが、多くの研究者の参加・発表を期待して国立国語研究所(立川市)での開催に変更した。 データベース構築は収録の漢字字書の翻刻本文の点検と整備を進め、テキスト情報だけでなく掲出字画像も表示できるWebシステムを公開する予定である。 データベース活用は、日本古辞書(『篆隷万象名義』『新撰字鏡』『類聚名義抄』)と中国古辞書(『切韻』『玉篇』等)そのものの研究を進めると同時に、さまざまな漢字漢文資料を援用して漢字の字体・音韻・訓詁・和訓を総合的に分析する。また、TEIやIIIF等の最新の人文情報学に関連する研究も進める。
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