研究課題/領域番号 |
16H03433
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
伊東 祐郎 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 教授 (50242227)
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研究分担者 |
真嶋 潤子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (30273733)
小林 幸江 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (40114798)
櫻井 千穂 同志社大学, 日本語・日本文化教育センター, 准教授 (40723250)
菅長 理恵 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 教授 (50302899)
石井 恵理子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (90212810)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイリンガル教育 / 日本語教育 / 年少者 / 測定 / 評価 / ダイナミックアセスメント |
研究実績の概要 |
本年度のDLA<聴く>の研究実績は、次の3つに分けられる。(1)日本語指導担当者からの情報収集:東京都葛飾区、八王子市、宇都宮市、島根県益田市の教委主催の日本語指導担当者研修で実際の教育現場での日本語指導及びDLAの取り組みについての課題等を得た。(2)教育現場の見学:2018年から始動した葛飾区での来日初期の日本語教室、小学校、中学校での移行期指導の現場を見学し指導助言を行った。(3)DLA「聴く」のデータ収集と分析:DLA科研の目標達成のため、協力校の日本語話者の児童分のDLA「聴く」のデータを採取、分析を行っている。 DLA<読む>については、昨年度(平成29年度)に収集した230名の日本語母語児童のDLA<読む>のデータの分析結果をもとに、テキストレベルの妥当性を検証した。その結果について学会で発表した。また、これまで収集の難しかったCLD生徒のDLA<読む>のデータ38名分を収集し、中学生(年齢枠12-15歳)のJSL評価参照枠<読む>の記述文の基礎データを得た。以上の基礎データをもとに作成したJSL評価参照枠<読む>の記述文を、30名の被験者の妥当性検証のためのパイロット調査を実施した。 DLA<書く>の本年度実績は、5月20日に行われた科研会議において確認した方針に則り、各学年のステージ6の記述の精緻化を目指した前年度収集作文データの分析に取り組んだことである。また、日本の小学校に在籍する外国人児童生徒2名に対して、日本語習得についての振り返りインタビューを実施した。その他、教育委員会からの依頼による教員研修において、現場教員との意見交換、情報収集を行った。 DLAの記述の精緻化を進める中で、「ダイナミック・アセスメント」としてのDLAの構造や特徴、課題選択を行うことの重要性について、日本語教育学会でのパネル発表に参加して発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況はおおむね予定通りである。DLA<読む>に関しては、JSL評価参照枠の記述文の精緻化に向け、ある程度のデータ数を収集し、分析することができた。また、その妥当性検証のために必要な調査の準備(DLA評価者養成研修受講者により記述文に基づく評価の実施)も整いつつある。 DLA<聴く>の精緻化の達成には、年少者のデータ―、及び日本語話者の事例の分析が不可欠である。現在、前者は60例ほど、後者はまだ20例ほどしか集まっていない。現在あるデータをもとに、「JSL評価参照枠」(「聴く」)の年齢枠別の記述を試みているが、それを見せる形にするにはまだ年少者、母語話者両方のデータが少ないと感じている。事例の収集は許可を得るのがなかなか難しい面があるが、科研の期間内にさらにデータ―収集に努めたい。 DLA<話す><読む>については、これまでの調査結果に基づき、学会発表や講演会で成果公開を行ってきた。また、「DLA研修会」を大阪府箕面市で行い、教員へのCLD児童生徒の日本語のアセスメントについての理解を促す機会を提供してきた。 DLA<書く>では、収集した作文データのうち、母語話者の作文について、語彙分析ソフトKHコーダーを使った語彙面の分析を進めており、2019年度日本語教育学会春季大会において成果発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、統計の専門家の協力を得て、記述文の妥当性及び信頼性(評価者がチェックした記述文の内容が児童生徒の能力を的確に表し、また、評価者間での評価の信頼性が保てるかどうか)の検証をして行く必要がある。零和元年度は複数の教育委員会及び学校教育現場(大阪府、滋賀県、兵庫県、横浜市、京都市、福岡市、豊田市、門真市、豊中市、出雲市)において研修を予定しており、それらの自治体と協力して、記述文の妥当性検証を進めていきたい。 引き続き「DLA研修会」を開催して、教員やCLD児童生徒に関わるボランティアや学生・院生等への理解を広める予定である。目的はDLAの記述へのフィードバックにある。一方で、CLD児童の母語のアセスメント・ツールを、日本語版の優れた翻訳を駆使することで作成していきたい。(現場でニーズのある言語に対応する予定) 併せて、年少者、母語話者のDLA「聴く」のデータ収集と分析を進め、「JSL評価参照枠」(「聴く」)の精緻化、つまり年齢枠別の記述を行う。また、その作業を通して見えてきた、現DLA「聴く」の聴解ビデオの構造的欠陥について分析し、今後の改訂版に備え新たな提案が示せるように準備していきたいと考える。また、語彙分析の成果を土台に、JSL評価参照枠の語彙、構成面でのステージ6の記述の精緻化に取り組む予定である。
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