研究課題/領域番号 |
16H03435
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
義永 美央子 大阪大学, 国際教育交流センター, 教授 (80324838)
|
研究分担者 |
渡部 倫子 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (30379870)
櫻井 千穂 同志社大学, 日本語・日本文化教育センター, 准教授 (40723250)
神吉 宇一 武蔵野大学, 言語文化研究科, 准教授 (40726551)
御舘 久里恵 鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 准教授 (60362901)
柳田 直美 一橋大学, 国際教育センター, 准教授 (60635291)
嶋津 百代 関西大学, 外国語学部, 准教授 (90756868)
金 孝卿 大阪大学, 国際教育交流センター, 特任准教授(常勤) (30467063)
永田 良太 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (10363003)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 支援者支援 / 自律学習支援 / 外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント / DLAテスター / 地域日本語教育コーディネーター |
研究実績の概要 |
プロジェクトの2年目に当たる平成29年度は、「大学チーム」「学校チーム」「地域・行政チーム」の3つのチームに分かれてデータ収集及び分析に取り組んだ。大学チームでは、自律学習支援の観点から、学習記録に支援者としての教師が記入するコメントの分析を行った。また、学習支援者が学習支援を通じてどのような学びを経験しているかを明らかにするため、学習支援に従事する大学院生を対象としたアンケート調査及びインタビュー調査、及び具体的な支援場面のデータ収集を実施した。さらに、自律学習を支援するためのオンラインプラットフォームの開発を企画し、基本的な構成とサイトデザインの設計に着手するとともに、zoomを用いた遠隔教育による留学生のキャリア支援にも取り組み、来年度以降分析を行うためのデータ収集を行った。 学校チームは、外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLAのテスター(以下、DLAテスター)を学習支援者と位置づけ、対話型アセスメントにおけるテスターの言語行動の解明に関する分析を進めた。また、DLAテスター養成研修担当者に対するインタビュー調査を実施し、その結果をふまえた質問紙案を作成し、パイロット調査を行った。 地域・行政チームは、28年度に実施した地域国際化協会等の職員,日本語支援者,日本語学習経験のある外国人を対象としたインタビューのデータから,日本語支援者が持つ,あるいは日本語支援者に求められる資質や能力を明らかにするための質問紙調査のパイロット版を作成した。また,職員及び有償の支援者のインタビューデータを質的に分析し,地域日本語教育コーディネーター人材としての専門性とその形成過程を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、平成29年度は支援者の接触支援スキルと意識の変容に関するデータ収集と分析を進めるとともに、支援者のための研修ガイドラインの開発に着手することとなっていた。前者のデータ収集と分析については、すでに一部の調査結果が学会報告や論文等として発表されており、また、現在のところ公表には至っていない研究課題やデータについても、おおむね順調に分析を進め、平成30年度には成果発表を行うように準備・計画している。 また後者についても、支援者が自らの支援について適切な振り返りを行うことが重要であるという研究結果に基づき、振り返りを促すツール等についての検討を始めつつある。以上のような点から、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
大学チームは、平成29年度に収集した学習支援者、及び留学生のキャリア支援に従事する支援者のデータの分析を進め、支援者が支援活動において経験する意識変容や課題を明確化する。また、具体的な支援場面の分析に基づき、支援に必要とされるスキルを記述・分析する。さらに、オンラインツールを用いた学習支援の可能性についても引き続き検討を進める。 学校チームは、テスターの言語行動に関する分析を進め研究をまとめるとともに、作成した質問紙を用いた調査をDLAテスター養成研修の事前と事後に実施する。それにより、DLAテスターの意識変容を解明し、精査した質問項目にもとづいてテスターの振り返りができるツールを開発することを目指す。 地域・行政チームは、29年度に作成した質問紙を用いて,日本語支援者が持つ,あるいは日本語支援者に求められる資質や能力に関する量的調査を実施する。また,ボランティア支援者及び外国人のインタビューデータを質的に分析し,それぞれの視点から支援者として求められる資質や能力を明らかにする。量的調査,質的調査の結果をもとに,支援者の資質・能力の診断シートを作成し,日本語支援者向けの研修のツールとする。 また、これまで基本的に「大学チーム」「学校チーム」「地域・行政チーム」の3チームごとに調査研究を実施してきたが、随時各チームのデータや調査内容を共有する中で、それぞれの現場でいわゆる「言語を教える」ことにとどまらず、外国人等の支援や多文化共生を実現する環境整備に従事するための専門性を持った人材が必要とされていることが浮かび上がってきた。今年度はそうした人材が今後の日本社会で果たしうる役割や意義を広く周知する一般書を、本科研の成果発表の一環として執筆・出版する予定である。
|