研究課題/領域番号 |
16H03436
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
助川 泰彦 首都大学東京, 国際センター, 教授 (70241560)
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研究分担者 |
松崎 真日 福岡大学, 人文学部, 准教授 (30709621)
吹原 豊 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (60434403)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | インドネシア人 / 技能実習生 / 日本語習得 / 統合 / 同化 / 韓国 / 雇用許可制 / 韓国語習得 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は外国人技能実習生として来日し、インドネシア語を共通語としマナド・ムラユ語をL1とするインドネシア共和国ミナハサ地方出身者の日本語習得を促進する要因と阻害する要因を縦断的に調査し、それと並行して雇用許可制によって韓国で働いているマナド人の韓国語習得についても同様の調査を行って、隣り合う東アジアの2カ国における外国人移住労働者のL2および異文化受容の共通点と差異を明らかにすることである。2カ国において「マナド人」という共通の言語文化背景を持つ者が言語習得と異文化受容にどのような違いを見せ、その要因が何であるかを解明することは、将来においてどのような外国人定住者向けの日本語習得支援が望ましいかを考える根拠を提供することになる。すなわち、本研究の究極的な目的は福祉言語学の提唱する人々の幸福な生活を実現するための科学的研究成果を達成することである。 これまでに大洗町のインドネシア人コミュニティの臨地調査を繰返して、団体監理型受入れの技能実習生に日本語とインドネシア語のインタビューを繰り返し、文化適応と日本語習得の実態について調査を重ねてきた。同町では20年以上のインドネシア人労働者受入れの経験があり、会社経営者や役場の準備体制が整っていることから大きな問題はなく受入れが進んでいる。しかしながら、日本語習得の速度は技能実習生自身が望んでいるようには進まず、語彙習得や漢字習得の速度は遅い。特筆すべきは茨城大学生と市民ボランティアによる日本語学習サポート活動で、意欲の高い技能実習生にとって日本語学習の動機付けとなっている。 一方の韓国安山市においてもインドネシア人労働者は大きなグループである。韓国では、インドネシア人同士の互助システムの他に官民を挙げての外国人サポートが行われているが、これが逆に韓国語学習を阻害している可能性が窺え、今後の研究調査の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本側では大洗町のキリスト教会GIIIとの良好な協力関係が構築されており、調査の度に大洗町インドネシア人住民が技能実習生を紹介し、調査場所として自宅を提供してくれるなどの便宜供与により順調に調査が進展している。 韓国においては安山市のアンテオケインターナショナル教会が調査に協力的な姿勢を示してくれて、同地に働くインドネシア人労働者との面談会場の提供があり、毎回の調査は効果的に実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年まで技能実習生度は3年間が上限であったが、現在は条件を満たせば5年までの滞在が可能になった。これまでに日本に到着している技能実習生のうちどの程度が3年目を超えての延長をするか、またその理由を調査する必要がある。さらに、そうした延長組の実習生がどの程度まで日本語習得を進めているか、面接による定量的な日本語能力判定とその背景にある日本社会適応の実態を対照しながら考察を進める予定である。 韓国においては2017年3月の調査において、安山市多文化通りのインドネシアレストランがインドネシア人労働者コミュニティを結びつける重要な役割を果たしていることが明らかになった。今後はこうしたレストランの協力も得て、安山市在住のインドネシア人労働者の韓国社会への同化、ないし統合の実態と韓国語習得の関係を観察・考察して行く予定である。
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