研究課題/領域番号 |
16H03439
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
卯城 祐司 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60271722)
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研究分担者 |
星野 由子 秀明大学, 学校教師学部, 准教授 (80548735)
清水 遥 東北福祉大学, 総合基礎教育課程, 講師 (20646905)
高木 修一 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (20707773)
名畑目 真吾 共栄大学, 教育学部, 講師 (60756146)
長谷川 佑介 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 講師 (40758538)
木村 雪乃 獨協大学, 法学部, 特任講師 (40779857)
濱田 彰 日本大学, 生産工学部, 助教 (50779626)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 英語教育 / リーディング / 視線計測 / 状況モデル / 読解指導 / 心的表象の更新 |
研究実績の概要 |
本研究は,英文読解において一貫したテキスト理解の確立に必要となる「理解の更新プロセス」を,テキスト理解の5つの状況的次元(同一性・時間性・空間性・因果性・意図性)の観点から読解中の視線計測によって検証することを目的とした。研究期間の1年目にあたる平成28年度では,5つの次元のうち同一性(登場人物の情報)の理解に焦点を当てた研究を行った。 これまでの研究から,日本人英語学習者にとって,テキスト中で離れた情報に対する理解の一貫性(「大局的一貫性」)を読解中に維持することは難しいことが分かっている。そこで,本研究では,特定の読解プロセスを促す教示を与えることで,英語学習者の読解中における大局的一貫性の維持が促進されるか否かを検討した。実験においては,物語の内容を正確に理解する目的で読解を行う「理解条件」と,物語の中で描写される出来事や登場人物の行動を出来る限り鮮明にイメージしながら読解する「イメージ条件」を設定した。そして,登場人物に関わる情報に対する注視時間や読み戻りなどのデータを視線計測により収集した。得られた視線計測データを条件間で統計的に比較した結果,学習者はイメージ条件においてのみ,テキスト理解の大局的一貫性の維持に成功していたことが明らかになった。このことから,物語文の内容をイメージしながら読むよう読解前に学習者に教示することによって,より豊かなテキスト理解(状況モデル)の構築が促され,大局的一貫性の維持を効果的にサポートできる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時の通り,本研究の理論的基盤となるイベント索引化モデル,及び第二言語による読解を扱った先行研究を精査し,実験計画の検討と改善を行うことができた。また,理解の5つの次元のうち物語文の理解に重要とされる同一性(登場人物の情報)に関する視線計測研究を実施し,その結果を学会にて発表,及び論文にて投稿し,採択にまで至った。上記の理由から,概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は同一性(登場人物の情報)の理解に関する研究を行ったため,今後は同一性以外の次元 (因果・時間・空間など)の理解に関して検証を行っていく。具体的には,視線計測による実験の実施に向けて,1文ごとの自己ペース読みによる読解時間測定の実験を行い,実験材料や結果の解釈について予備的な検討を行う予定である。このような予備的な検討に基づき,同一性以外の次元の理解を検証する視線計測実験の準備と実施を目指す。これらの研究により,英語学習者にとって一貫性の維持が難しい次元を特定し,読解指導において留意すべきテキストの性質について示唆を与える。
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