研究課題/領域番号 |
16H03461
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
田中 良英 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (20610546)
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研究分担者 |
割田 聖史 青山学院大学, 文学部, 教授 (20438568)
津田 博司 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30599387)
長森 美信 天理大学, 国際学部, 准教授 (50412135)
杉山 清彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80379213)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 史学一般 / 移動 / 近世 / アイデンティティ |
研究実績の概要 |
17世紀から19世紀第3四半期の時期を中心に「人の移動と接触」の実態と影響の包括的理解を試みる本研究においては、前半の平成28~29年度にパターン化に向けた一旦の仮説的結論の提示を試みる過程の中で、まずはその前提となる個別事例の集積に努めた。具体的には研究代表者及び研究分担者を中心に、①18世紀ロシア帝国に対する移入エリートの出身国の変化と活動実態(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターを中心に資料を収集)、②17世紀の清露接触下ユーラシア東部におけるロシア人捕虜を始めとする人員の移動、③19世紀後半から20世紀初頭のカナダに対するウクライナ系移民の移動と現地多文化主義への影響、④近世朝鮮半島を舞台とする朝鮮及び周辺世界の各種人員の流出入、⑤19世紀から20世紀初頭のポーランド移民によるヨーロッパ内及びアメリカ合衆国への移動、などについて個別研究を進め、それらに関しては平成28年8月及び12月に開催した研究会における報告を通じ、メンバー間での議論と共有を行った。 また①~③については、平成28年10月上旬に開催されたロシア史研究会大会からの招きに応じ、ロシア国家を軸とした17~18世紀ユーラシア世界の東西双方における移動、そしてユーラシア世界から太平洋を介しての外部世界への移動に関し比較史的に論じる形でパネル報告を行った。その質疑応答の過程で、ユーラシア世界及び太平洋・大西洋世界を中心とした当初の地域設定に加え、オセアニア世界や日本への移動に関する視角を含めることが必須との提言・認識を得たため、個別事例研究の範囲を広げる必要が生じ、平成29年度に予算を繰り越す形で新たな調査を遂行した。具体的には、自発的・強制的に近世日本に流入したヨーロッパ人・朝鮮人の動向に関し、熊本県を対象に複数メンバーによる史跡調査を行い、それらの知見も含めて平成29年5月に年度内成果を取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は将来の包括的整理の前提となる個別事例の集積を中心に研究活動を進めたが、当初予定していなかった平成28年10月のロシア史研究会大会へのパネル報告参加の成果として得られた新たな知見・視角により、研究対象の拡大を検討することになった。そのため平成29年5月末まで補助事業を延長することになったが、この期間延長のおかげで、初年度として想定していたデータの集積については一定の見通しを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
個別研究会や学会パネル報告を含め、平成28年度の研究活動を通じ、近世期の特徴を探る上での前後の時期との比較、対象とすべき地域や視角の拡張の必要性について認識が深まったため、すでに連携研究者として研究会や共同調査に参加していたメンバーの一部を研究分担者に変更することで、従来やや作業が手薄であったユーラシア西部やラテンアメリカとの関係性などについても、個別事例の集積をより本格化させることとする。こうした分担者の増加による研究体制の充実化は、平成29年度末に予定されているパターン化作業の完了にとっても、助けになるものと考える。 またメンバー各人が自身の専門領域・地域に関する研究を深化させる活動と並行しつつ、平成28年度においては日本国内を対象に行った共同調査を、国外に関しても展開することで、将来の包括的整理に向けた共同研究としての性格をより強化することを予定している。
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