研究課題/領域番号 |
16H03480
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
堀 新 共立女子大学, 文芸学部, 教授 (80296524)
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研究分担者 |
湯浅 佳子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (00282781)
山本 聡美 共立女子大学, 文芸学部, 教授 (00366999)
金子 拓 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (10302655)
川合 康 大阪大学, 文学研究科, 教授 (40195037)
佐島 顕子 福岡女学院大学, 人文学部, 教授 (40225173)
山本 洋 金沢大学, 国際機構, 准教授 (50583168)
黒田 智 金沢大学, 学校教育系, 教授 (70468875)
山本 博文 東京大学, 史料編纂所, 教授 (80158302)
井上 泰至 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 人文社会科学群, 教授 (90545790)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 合戦図屏風 / 戦国軍記 / 古文書・古記録 / 戦国合戦 / 合戦絵巻 |
研究実績の概要 |
平成29年度は関ヶ原合戦と大坂冬・夏の陣を中心に、合戦図屏風・戦国軍記・古文書・古記録の調査を行った。絵画資料の調査先と資料名(閲覧・撮影・画像入手)は以下の通りである。 1)岐阜県博物館(関市) 「関ヶ原合戦図屏風」、2)太陽コレクション(町田市) 「関ヶ原合戦図屏風」「長久手合戦図屏風」のほか合戦図、3)鍋島報效会(佐賀市) 「朝鮮軍陣図屏風」、4)福岡市博物館(福岡市) 「朝鮮軍陣図屏風」、5)渡辺美術館(鳥取市) 「関ヶ原合戦図屏風」ほか、6)大阪城天守閣(大阪市) 「大坂夏の陣図屏風」「最上屏風」「東照宮縁起絵巻」、7)国立晋州博物館(韓国) 「征倭紀功図屏風」「平壌城戦闘図屏風」「東莱府殉節図」「釜山鎮殉節図」。 軍記・古文書・古記録等の文献史料については、8)茨城大学図書館(水戸市)、9)国立国会図書館(千代田区)、10)国文学研究資料館(立川市)、11)佐賀県立図書館(佐賀市)、12)急襲歴史資料館(小郡市)、13)慶應義塾大学図書館幸田文庫(港区)、14)九州大学附属九州歴史資料館(福岡市)、15)東北大学図書館狩野文庫(仙台市)、16)宮城県立図書館伊達文庫(仙台市)、17)京都大学附属図書館谷村文庫(京都市)、18)小浜市立図書館酒井家文庫(小浜市)、19)龍谷大学図書館(京都市)、20)弘前市立弘前図書館(弘前市)、21)光丘文庫(酒田市)において史料調査を行い、史料の閲覧と写真撮影を行った。 その他、東京大学史料編纂所(文京区)・国立公文書館内閣文庫(千代田区)・早稲田大学図書館(新宿区)・東京都立中央図書館(港区)において史料調査を行ったほか、各種展覧会で合戦図屏風を閲覧するなど、積極的な情報収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集の対象である軍記物語・合戦図屏風(合戦絵巻)・古文書・古記録のうち、軍記物語の収集は順調に進み、「関ヶ原軍記」翻刻作業を終了して刊行準備の段階にある。また、古文書・古記録についても、「関ヶ原合戦古文書集(仮)」として古文書の収集中である。予想外に多くの古文書があるため、H29年度中には終了しなかったが、入力を進めるとともに点検作業を行っている。 いっぽう、合戦図屏風(合戦絵巻)の調査と資料収集は、資料撮影に高精細カメラを使用することにより、より精度の高い画像を入手することができるようになった。その反面、撮影により慎重さが必要となり、H28年度よりも撮影に時間がかかる面もある。平成29年度の活動においては、太陽コレクションのように新たに存在を知り、閲覧・撮影できた絵画資料があり、また渡辺美術館(鳥取市)所蔵の「関ヶ原合戦図屏風」は原本閲覧ができなかったものの、所蔵機関のご厚意で画像を入手することができた。また大阪城天守閣では、「大坂夏の陣図屏風」「最上屏風」を熟覧・撮影するなど、大きな進展があった。各史料所蔵機関のご厚意により、10数人で原本を熟覧する機会に恵まれ、文学・美術・歴史学それぞれの立場から意見を出し合って検討できたので、予想以上の成果が生まれつつある。 共同研究メンバーの中心メンバーが、軍記と語り物研究会2017年度大会シンポジウム「戦国合戦図の問題系―関ヶ原の戦いを中心に―」において司会とパネラーを務め、その準備過程も含めて共通討論が進み、それぞれ論考をまとめることができた。これは最終年度にむけて大きな弾みとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
第一は、これまで通りに軍記物語・合戦図屏風(合戦絵巻)・古文書・古記録の資料収集を推進することである。絵画資料については、H29年度中に新たに存在情報を把握した「関ヶ原合戦図屏風」があり、それについてはH30年度に閲覧・撮影を行う予定である。軍記物語は、「関ヶ原軍記」以外の史料収集も進んでおり、さらなる収集を行い、諸本の比較検討を進めたい。古文書・古記録については、古文書を中心に関ヶ原合戦関係史料の収集を進めているが、史料入力とともに入力チェックを入念に進めていく必要がある。 第二に、絵画資料の基礎的検討を行うための史料収集と分析を行うことである。具体的には、合戦図屏風(合戦絵巻)の成立や伝来に関する基本史料の収集・検討を行うことである。合戦図屏風の基礎的史料の分析は遅れており、ややもすれば100年近く以前の学説が、検証もされずに踏襲されている現状がある。新史料の発掘だけを目標とするのではなく、通説の根拠となっている史料を、現在の研究レベルで再点検することも必要だと考えている。 第三に、以上のような史料収集・分析を経て得られた知見を、歴史学・文学・美術史の三分野合同で討議し、有機的な意見交換によって、それぞれの分野だけでなく、総合的な研究レベルを底上げすることである。H30年度末には、3年間の共同研究の総仕上げとともに、さらなら学際的研究へのステップとして、合同シンポジウムの開催を企画している。これによって、さらなる知見と方法論を得ることができるであろう。
史料調査(熟覧)も高精細画像も入手できない場合もありうるが、その場合は入手できる画像の範囲で研究をするしかなく、全体の構図や一部の図様が検討対象となるであろう。できうる限り、より高精細の画像を入手する努力を重ねつつ、軍記物語や古文書・古記録の分析で補いつつ研究を進めていくことが、今後の方策と言えるであろう。
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