研究課題/領域番号 |
16H03482
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研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
鳥山 淳 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (60444907)
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研究分担者 |
小野沢 あかね 立教大学, 文学部, 教授 (00276700)
小屋敷 琢己 琉球大学, 教育学部, 教授 (20404551)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 沖縄 / 占領 / コザ / 伊江島 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、占領下の沖縄における住民の思考と行動を「抵抗と交渉」の観点から捉え、占領に向き合う主体性を複眼的に解明することにある。その分析にあたって重視しているのは、関係者の手元に遺された資料を有効的に活用しながら、実証的な歴史記述を行うことである。 平成28年度においては、研究の基礎となる資料群の内容調査およびその活用準備を最優先にして研究を進めた。沖縄県伊江島での運動の記録を数多く含む阿波根昌鴻資料については、占領下の伊江島における基地問題に関する資料の分析に取り組み、作成年ごとにデジタル画像化した資料をリスト化して、関連文書の所在を把握できるようにした。それにより、1955年の米軍による土地接収以後の住民運動について、個別の文書を参照することが可能となり、各局面における住民の訴えの内容を詳しく確認できる状態にした。また当該時期のノート類のうち、特に住民の動きを継続的に記述しているものについて、デジタル画像化と並行して翻刻作業を行い、冊子態として発刊するための準備に取り組んだ。同じく阿波根昌鴻資料に含まれる写真記録については、ネガフィルムのデジタル画像化を進め、総量を把握するとともに、内容分析に着手可能な状態とした。 コザ市(現沖縄市)の行政記録を数多く含む大山朝常資料については、主に1960~70年代における歓楽街と風俗営業をめぐる諸問題と、それに対する行政・住民の取り組みに関する記録を中心に内容を分析し、当時の状況が具体的に記述されている文書類のリスト化に取り組んだ。またその文書類の活用方法について、沖縄市史編集の事務局と資料情報の共有を図りながら、調査方法の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
阿波根昌鴻資料については、平成28年11月と平成29年2月に集中的な調査を実施し、必要な作業を着実に実施することができた。本研究にとって不可欠の記録となる占領下の基地問題関連の文書類については、作成年ごとに文書を抽出してリストを作成し、デジタル画像化を行うことによって、問題の経緯について詳細な分析を行うことが可能となった。なお上記の調査期間において、資料保管者である「わびあいの里反戦平和資料館」の倉庫内において、これまで把握していなかった資料の存在を確認したため、目録作成の作業を新たに追加した。 大山朝常資料については、平成28年8月に調査を実施し、資料の分析と選別を進めた。それによって、占領下の社会状況を象徴する文書類が多数含まれていることを確認するとともに、その詳細な分析を通して検証すべき課題について把握することができた。このような検討をふまえて最優先に活用する文書のリストを作成しており、引き続きデジタル画像化の作業が必要な段階である。
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今後の研究の推進方策 |
阿波根昌鴻資料については、前年度と同様に調査期間を2つ設定し、平成29年10月と平成30年2月に集中的に調査を実施する。その作業期間において、本研究が重視するテーマごとに、関連する文書類の分析とリスト作成を進める。また、すでに内容の分析を進めている文書類については、主要なノート類を翻刻した状態で冊子化する作業に取り組み、早期に公開できるように取り組む。 大山朝常資料については、今年度において、すでにリスト化した重要文書のデジタル画像化を優先的に進めることが不可欠である。そのため平成29年夏期に調査期間を設定してデジタル画像化の優先順位とスケジュールを設定するとともに、その進捗状況を確認しながら内容分析を進めるための研究会を開催する。
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