本研究の課題は、占領下の沖縄における住民の思考と行動を「抵抗と交渉」の観点から捉え、占領に向き合う主体性を複眼的に解明することにある。その分析にあたっては、関係者の手元に遺された資料を有効的に活用し、実証的な歴史記述を行うことを重視している。 令和元年度においては、研究の基礎となる資料群の詳細な調査を継続するとともに、その成果をふまえた活用方法を具体的に検討し、その一部についてデジタル画像化の作業を行った。 沖縄県伊江島における基地問題の記録を多数含んでいる阿波根昌鴻資料については、米軍による土地接収が行われた1955年から沖縄の施政権が返還された1972年までの期間における 伊江島の基地問題関連文書のデジタル画像化を完了した。そのうえでデジタル画像と資料情報を突き合わせながら作業漏れの有無を確認し、一部の資料についてデジタル画像化の追加作業を施した。それと同時に、1950年代の活動記録であるノート類の翻刻作業を進め、資料の所蔵者である「わびあいの里・反戦平和資料館ヌチドゥタカラの家」と連携して冊子の発刊に取り組み、2020年3月に『阿波根昌鴻資料3 爆弾日記1号・2号』として発刊された。 嘉手納基地に隣接するコザ市(現沖縄市)の記録を多数含む大山朝常資料については、稀少性の高い資料を中心として公開・活用方法を具体的に検討し、歓楽街関連文書のデジタル画像化を行った。またコザを含む沖縄本島中部の行政記録が不足している状況を考慮して、コザ市の各部署が作成した行政刊行物のリストを作成し、資料的価値が確認できるものについて複製資料の作成を行った。
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