研究課題/領域番号 |
16H03490
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
気賀沢 保規 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員(客員研究員) (10100918)
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研究分担者 |
松原 朗 専修大学, 文学部, 教授 (00199837)
肥田 路美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00318718)
片山 章雄 東海大学, 文学部, 教授 (10224453)
妹尾 達彦 中央大学, 文学部, 教授 (20163074)
梶山 智史 明治大学, 文学部, 助教 (20615679)
山口 正晃 大手前大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60747947)
榎本 淳一 大正大学, 文学部, 教授 (80245646)
松浦 典弘 大谷大学, 文学部, 准教授 (80319813)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 隋唐仏教社会 / 洛陽学 / 房山石経 / 巡礼 / 唐宋変革 / 敦煌吐魯番 / 石刻資料 / 東アジア文化論 |
研究実績の概要 |
中国史上の頂点の一つに位置づけられる隋唐期は、仏教が深く広く社会に浸透し、「仏教社会」とも規定できる本質を備えた時代であった。本研究はその「仏教社会」の多面性や多元性の解明を通じて、隋唐国家の本質に迫り、さらに隋唐を中心に形成された東アジア世界の文化的な関係性や構造を明らかにすることを目指している。 上記の課題を具体的に考察するために、都市(長安・洛陽・揚州)領域、地方(敦煌吐魯番)領域、文化・精神(美術・文学)領域、隋唐・東アジア国家論領域、石刻資料領域の5班に分け、メンバーが各班に重複関与する態勢を築いた。その上で全員が一堂に会して成果を報告しあう研究会(ワークショップ)を3回(5月、9月、12月)開き、認識の共有と深化をはかった。 第二年度の研究上の主要な柱は、隋唐洛陽を共通項とする国際シンポの開催であったが、当初の計画からやや規模を膨らませて実施することができた。日時は2017年3月16日17日の両日、京都大学総合人間学部に会場を借り、報告者は19名、コメンテーター等が6名となり、うち海外からは中国が5名、韓国が3名が報告した。洛陽に焦点を当てたのは、隋唐国家の基軸でありながら総合的研究が不足しているとの反省と、そこに隋唐国家の仏教を含む特質が凝縮しているとの見通しに基づくが、2日間の集中した報告と論議を通じて洛陽のもつ意義がより深く認識できたと考える。シンポジウムの成果は当日「予稿集」として配布したが、第三年次中に正規の論文集の公刊を予定する。 研究代表者として氣賀澤は、初年度に刊行した『唐代墓誌所在総合目録』を補う人名索引を作成、また中国洛陽や北京の国際シンポに出席し、隋唐「仏教社会」論の意義を報告、さらに主催した洛陽学シンポで基調報告もした。各研究分担者もそれぞれの立場から着実に成果を発表しており、次年度の最終年度にまとまった成果に結実することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は各分担者(連携研究者2名を含む)に主担当としてのテーマを設定し、その研究を進めつつ、定期的に研究会(ワークショップ)で報告をして互いの研究テーマを共有する手続きをとってきた。ただ近年、大学運営等による忙しさが加わり、全員が一堂に会することはなかなか難しい現状にあるが、それでも共同研究の実を挙げる上で、この試みは一定の意味があると認識する。 ただし研究分担者に科研費の趣旨とそれぞれの役割、期待される方向が十分理解されているかという点では、なお一層の努力が必要と実感している。第二年次の3月に実施した「隋唐洛陽国際シンポ」では、本科研費メンバー以外の中堅若手研究者から多くの協力が頂けたが、研究分担者は諸般の事情から主導的役割を果たすまでに至っていなかった。このことはまた、研究代表者の側が「隋唐洛陽論」の体系的、理論的な整理や意義づけがまだ十分できていなかったことも関係する。第三年次に「隋唐洛陽論集」を公刊するまでには、その研究の新たな理論的地平が提示できるように努める所存である。 また隋唐洛陽の意義づけとも繋がって、本研究の初年度に果たした『新修唐代墓誌所在総合目録』に基づく墓誌(石刻)資料の総合的、系統的把握を、第二年次に鋭意進めたが、結局3分の1程度で止まり、そこから新たな論の構築にまで踏み出せなかったことを反省している。墓誌の全容を把握する仕事はまだ誰も果たしておらず、大変難しい作業であることが理解できた。しかし第三年次にも仕事を継続し、唐代墓誌にもとづく出土(埋葬)状況や寺院史料などの整理から、唐代墓誌論、仏教社会論に新知見を出せるようにしたい。 最後に隋唐「仏教社会」論から東アジア文化論への展開は、まだ議論として十分深まっていない。それは全体を集約する中で導き出せるものと考える
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今後の研究の推進方策 |
本研究は年に数回、共同研究会を開催し、分担者個人が現在進めている研究テーマの報告、また出席した海外学会や調査活動の参加報告などを通じて、それぞれの抱える研究内容を共有してきた。この地道なやり方は10人規模の科研費には有効であると考えられ、今後この方式をさらに推し進め、代表者も主体的に関与していきたい。 さらに分担者には海外調査や海外学会への出席を求めているが、ほとんどは本務校の業務に時間をとられ、ために対外的な学術活動に困難をきたしている。科研研究会も土曜日、日曜日を使わざるを得ない現状である。その中で研究代表者の氣賀澤は比較的時間の余裕があるため、各人の分担領域も側面から補っていく所存である。なお分担者が積極的に動き出すインセンティブを高めることを考え、科研費を一律分配するのではなく、本科研課題に近接する海外調査・学会への出席、また研究に特別な経費を必要とする場合に、柔軟に対応できるように経費執行をする。またその際の成果は、本研究費に基づくものであることを必ず明記する。 最終年度にあたる2018年度には、成果に繋げる具体的計画を前面に出していきたい。まず「隋唐洛陽学論集」の刊行を2018年末までに実現し、並行して「石刻資料をめぐるミニシンポ」(東アジア石刻研究会や中国中世史研究会と共催)、「敦煌吐魯番文書の調査とワークショップ」(東洋文庫研究会と共催)などの形をとって、他の研究会などと連携をとり共同研究を進める。最後には本研究班全員が3年分の成果を、「隋唐「仏教社会」と東アジア文化論」報告会の場で報告する機会を用意し、論文集の刊行に繋げる。 並行して、「新編唐代墓誌所在総合目録」に基づく内容の整理とその後に公表された墓誌の補充、すでに入手されている墓誌拓本資料集の刊行、房山石経題記資料集の整理刊行なども計画している。これらの仕事は本研究を補充する役割を果たすものである。
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