研究課題/領域番号 |
16H03499
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中澤 達哉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60350378)
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研究分担者 |
近藤 和彦 立正大学, 人文科学研究所, 研究員 (90011387)
森原 隆 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70183663)
小山 哲 京都大学, 文学研究科, 教授 (80215425)
小森 宏美 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50353454)
池田 嘉郎 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80449420)
古谷 大輔 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (30335400)
小原 淳 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20386577)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ジャコバン / 共和政 / 革命 / 自由 / 独立 / 共和主義 / 政治思想史 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
研究3年目の平成30年度は以下の研究実績があった。 ①個別的な実証研究を進めるための史料収集と分析の継続:平成30年度も個別的な実証研究を進めるための一次史料の収集と分析を継続した。前年度までに確立された分析枠に基づき、当該年度はおもに各国ジャコバンの「革命・自由・共和政」論を分析した。 ②研究者間の知見の共有と比較研究:当該年度は各研究の知見を共有すべく、平成30年10月に早稲田大学で研究会を開催した。ここで、年度末にハンガリーで開催予定の国際ワークショップの企画を行ったほか、最終年度に開催予定の西洋史学会小シンポジウム「「革命」「自由」「共和政」を読み替える―向う岸のジャコバン」の企画も開始した。また、最終年度に外国研究者を招聘して開催予定の国際シンポジウムも構想しはじめた。 ③ヨーロッパでの国際ワークショップの開催:平成31年3月に本研究メンバー全員がハンガリー・中央ヨーロッパ大学を訪問し、本科研と現地歴史学部との合同企画のもと国際ワークショップを共催した(European Jacobins and Republicanism)(https://pasts.ceu.edu/events/2019-03-18/european-jacobins-and-republicanism)。ハンガリー・チェコ・ポーランドのジャコバン研究者を4名招聘したほか、中央ヨーロッパ大学の研究者・大学院生を含む総勢40名程度が参加する大変有意義なワークショップとなった。ここでは、現地研究者の先端的知見に学ぶだけでなく本研究メンバーの知見をもって、現地研究者に対して、日本側からジャコバン研究の総合にむけた議論を提起することができた。この成果は、次年度に日本で開催予定の西洋史学会小シンポジウム「「革命」「自由」「共和政」を読み替える―向う岸のジャコバン―」において結実するであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述のように、平成31年3月に本科研とハンガリー・中央ヨーロッパ大学歴史学部との共催による国際ワークショップに、連携研究者のバラージュ・トレンチェーニ教授(歴史学部学部長)、エトヴェシュ・ロランド大学のヘーニヒ・ヘンリク研究員、チェコ科学アカデミーのダニエラ・ティンコヴァー主任研究員、ポーランド科学アカデミーのアンナ・グジェスコヴィアク=クルヴァヴィチ主任研究員の4名を招聘し、報告をお願いした。一方、日本側からは、本科研メンバーの近藤和彦(立正大学)が“What new do we expect from Jacobin historiography?”、古谷大輔(大阪大学)がSwedish experience of "revolution" as a renewal of "monarchia mixta”、そして科研代表の中澤達哉(早稲田大学)が“Creation of the thought of “Republic with King” of the early Hungarian Jacobins, 1793”と題する研究報告を行った。 このワークショップにおいて、ジャコバン研究の今日的課題とジャコバン概念のヨーロッパ規模での地域的偏差が確認されるとともに、中東欧や北欧における共和主義のもうひとつ別の水脈の存在が論じられた。例えば、ハンガリー・ジャコバンの「王のいる共和政」論と「王のいない共和政」論の混在、スウェーデンの「ジャコバン主義の王国」論とあわせて、オーストリア・ジャコバンに対するトスカーナ伯領の間接的影響(レポルディアン・モーメント)など、従来のジャコバン研究史にはない新たな進展がみられた。今年度の研究成果はこうしたきわめて大きな意義を持つことから、本研究は当初の計画以上に進展していると結論づることができる。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度にあたる平成31年度および令和元年度は、以下の要領でジャコバン研究の総まとめを遂行する。 ①西洋史学会小シンポジウムの開催:最終年度(令和元年5月17日)に西洋史学会小シンポジウム「「革命」「自由」「共和政」を読み替える―向う岸のジャコバン」を開催する。代表の中澤が「ハンガリー・ジャコバンの「王のいる共和政」思想の生成と展開―「中東欧圏」という共和主義のもうひとつの水脈」、分担者の近藤和彦が「ジャコバン研究史から見えてくるもの」、古谷大輔が「混合政体の更新と「ジャコバンの王国」―スウェーデン王国における「革命」の経験」、小山哲が「ポーランドでひとはどのようにしてジャコバンになるのか―ユゼフ・パヴリコフスキの場合」、池田嘉郎が「革命ロシアからジャコバンと共和政を振り返る」と題する報告を行う予定である。 ②東京国際シンポジウムの開催:令和元年7月にハンガリー・中央ヨーロッパ大学からバラージュ・トレンチェーニ教授を招聘し、国際シンポジウム"Organic Metaphors and the State in Medieval and Early Modern Europe"を開催する。中東欧における共和主義の水脈のひとつを国家有機体論的なメタファーから検証する作業になる。平成30年度と同様、本シンポジウムでは、現地研究者の先端的知見に学ぶだけでなく、現地研究者が専門外とする地域を研究対象とする本研究メンバーの知見をもって、日本側から新たな分析枠を提起する目的で実施される。 ③研究成果出版:以上の①②の成果を総合する。日本語と英語による出版に踏み切るための準備を年度末までに行い、科研終了と同時の出版を目指す。
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