研究課題/領域番号 |
16H03512
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
三宅 俊彦 淑徳大学, 人文学部, 教授 (90424324)
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研究分担者 |
櫻木 晋一 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00259681)
菊池 百里子 (阿部百里子) 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構本部, 総合情報発信センター, 研究員 (50445615)
遠藤 ゆり子 淑徳大学, 人文学部, 准教授 (70612787)
中村 和之 函館工業高等専門学校, 一般人文系, 教授 (80342434)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 考古学 / 東ユーラシア / 出土銭 / 貨幣 / 流通 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、各研究分担者がそれぞれの地域において調査・研究を進めた。研究代表である三宅俊彦は、モンゴル科学アカデミー歴史・考古学研究所収蔵のカラコルム遺跡出土銭の調査を行い、拓本・計測などの作業をほぼ終了した。今後データ化を進め、現地で報告書を刊行する協議をしている。また情報共有のための研究会を開催した他、銭貨の金属組成分析に関する研究会を福岡市埋蔵文化財センターにて開催した。この研究会にはオックスフォード大学のリセ・ヤンコフスキ氏を招き、海外での調査事例に関しての情報収集も行った他、田口智子氏(東京藝術大学)、斎藤努氏(歴史民俗博物館)など国内の専門家からも最新の研究成果を発表していただいた。 日本国内では、研究分担者の中村和之が北海道にて研究協力者の西谷榮治とともに、出土銭の情報収集とデータ化を進めている。またハバロフスク地方博物館所蔵の永楽通寳に対して行った成分分析および歴史的背景に関して報告を公表している。東北地方では研究分担者の遠藤ゆり子が出土銭のデータ収集・整理を着実に進めており、次年度も継続する予定である。この他、研究分担者の櫻木晋一が静岡県にて発見された複数の一括出土銭の調査、北九州市新馬場遺跡出土の朝鮮貨幣の金属組成の分析などを行っている。 ベトナムでは、研究分担者の菊池百里子がハティン省博物館収蔵の一括出土銭の調査を行った。カム・ズエ出土銭からは近世初期に長崎で作られた長崎貿易銭の元豊通寳が200枚近く発見され、日越の交易活動および銭貨の流通に関して重要な発見となった。この調査には三宅俊彦・櫻木晋一も参加している。 この他、貨幣史的な資料調査として、英国ケンブリッジ大学フィッツウィリアム博物館収蔵の東アジア貨幣の調査も行った。この調査では朝鮮の貨幣を櫻木晋一が、中国清朝の貨幣を三宅俊彦が調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各研究分担者が、それぞれの地域において調査・研究および資料収集を確実に努めており、その成果が蓄積しつつある。この点においては、予定通りである。日本国内においては、北海道と東北地方の出土銭データの収集とデータベース作りが着実に進展している。この成果を貨幣考古学の確立に役立てることが今後の研究課題となろう。また本州各地の一括出土銭の調査、出土銭の成分分析などの蓄積も、今後の研究の進展に期待が持てる。これらもその成果を統合して問題点を広く共有していくため、研究成果の公表の具体化を進めたい。モンゴルの調査は、おおむね当初予定したデータ化の作業を終えることができた。今後はデータ整理と分析、研究成果の取りまとめに移ることになろう。ベトナムの踏査では一括出土銭から長崎貿易銭が大量に発見されるなど、大きな成果が上がっている。その成果は現地で成果報告会を開き公表し、その様子を現地テレビメディアが報道するなど、研究成果の公表・社会還元に資するものとなっている。 また、英国の研究者との情報共有や学術交流を進める機会があり、その点においては当初の予定をこえて新しい研究テーマが立ち上がりつつある。予想を上回る成果と評価できよう。今後この研究テーマを着実に発展させていくことが望まれる。 その一方で、当初予定していた中国のShenzhen博物館との共同調査は、現時点ではまだ実現できていない。これは中国国内の法令の改定により、海外との共同調査の事前審査の条件が変わったため、新たに協定や申請を行う必要が出たためである。現在Shenzhen博物館が申請の準備を始めており、来年度には共同調査が実現するものと期待される。 以上のように、基本的には順調な部分が多いが、滞っている部分もあり、また予想をこえて新しいテーマが期待できる部分も見られる。総じて、進捗状況はおおむね順調と評価できよう。
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今後の研究の推進方策 |
基本的にこれまでの調査方針で進める。現在のところ、多くの研究分担者の担当分野において順調に調査・研究が進展している。今回の研究課題の実現のために、次年度も予定通りに進める。 日本国内では北海道および東北地方の出土銭資料の収集とデータ化を進め、最終年度に成果をまとめる方向で進めたい。国内の新たな出土銭の情報も着実に収集し、最終年度には日本国内の銭貨流通の実態を解明する方向でまとめたい。上記の研究成果は、調査報告ないしは資料集のような形での公表を目指す。 国外では、モンゴルの調査は基本的に終了した。今後はデータの整理と研究成果の取りまとめにうつる。必要であれば補足的な調査も行い、現地での調査成果の公開に向けた協議をすすめたい。ベトナムでの調査も、現在のところ順調である調査地のハティン博物館には複数の一括出土銭資料が収蔵されているため、次年度も調査を継続して進める。これら海外の調査成果について、現地での公表も含め公開方法を協議していきたい。 英国での東アジア貨幣資料の調査は、新しい研究課題であり本研究テーマにおいては研究史的位置づけになる。現地の研究者との情報共有のために、研究会の開催やシンポジウムなどを通じて学術交流を進めたい。また滞っている中国のShenzhen博物館との共同調査は、中国の所管官庁への申請を始める段階までこぎ着けた。次年度以降調査が実現するものと期待される。この共同調査では大量の収蔵資料を調査することが予定されており、本研究課題の期間内での完了は難しく、今後の進捗状況をふまえて、順調に共同調査が進展するようであれば、本研究課題を発展的に進めるために、継続的な研究計画を再設定して進めていきたい。中国での共同調査も、現地の状況に合わせた形で調査成果を公表していきたい。
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