研究課題/領域番号 |
16H03513
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
佐々木 憲一 明治大学, 文学部, 専任教授 (20318661)
|
研究分担者 |
吉川 真司 京都大学, 文学研究科, 教授 (00212308)
田中 裕 茨城大学, 人文学部, 教授 (00451667)
菱田 哲郎 京都府立大学, 文学部, 教授 (20183577)
川尻 秋生 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70250173)
日高 慎 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70392545)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 古墳発掘 / 古墳測量 / 風土記研究 / 常陸 / 播磨 |
研究実績の概要 |
2016年度の最大の成果は、茨城県かすみがうら市 折越十日塚古墳の周濠部分を2017年3月に発掘調査したことである。まず、前方部前端は地権者によって大きく破壊されていたが、内堀の一部を検出できたことにより、2010年の測量調査時に推定した全長76mではなく、70m程度に収まることがわかってきた。また、墳丘の東側に、墳丘主軸と直行して3本の発掘区を設定したところ、予想通り濠が2本検出された。ゴボウ畑時代の攪乱が大きかったが、それでも、後円部とクビレ部(後円部・前方部接合部分)から延びる発掘区では、外濠の幅が10m程度、深さ1.5m程度と判明した。通常、多重周濠の場合、本格的は濠は内濠のみであり、折越十日塚古墳のように外濠が内濠と同じくらい本格的な事例は日本で初めてである。極めて貴重な発掘例となった。またクビレ部と前方部の裾も今回の発掘調査により確定した。現状の裾より2mほど外側での検出であり、墳丘が相当削られていることが判明した。 同時に、播磨地域でのフィールドワークも実施した。2016年5月に兵庫県神崎郡神河町所在の高通古墳群の測量と城山1号墳の横穴式石室の実測を実施した。8月には同町の古城山古墳と高通3号墳の踏査、さらに12月に新野地区の分布調査を実施し、新野山根古墳の所在を確認した。播磨は常陸と同様、風土記が残る地域であり、また風土記と遺跡を総合的に研究する点では常陸より格段に進歩している地域である。ただ、『播磨国風土記』の存在が明らかになったのは江戸時代であるため、遺跡・史跡を風土記の記述に当てはめる作業が近代になって行われた点で、風土記研究の盛んな出雲などとは区別される。つまり、本研究は近代史へも貢献できる可能性があって、重要と考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度は、当初予定してた古墳の発掘調査の許可が地権者から得られず、代替の調査地を確保するために苦労した。そのため、茨城県内の古墳集成といった、発掘調査以外の研究が進まなかった。また、全県域古墳集成という広い視野に立った考古学的研究が進まなかったため、常陸においては古墳の調査成果と文献史学的研究の統合解釈まで進めることができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
折越十日塚古墳の発掘調査と兵庫県神河町域の古墳の測量・石室実測調査は継続する。 次に、茨城県の古墳集成作業を開始したい。それと連動して、『常陸国風土記』の立評記事がある地域の古墳の動向を探り、古墳の動向と立評記事での在地豪族の動向とに相関関係があるのか、推測できるようにしたい。 また、出雲、肥後、肥前にも出張し、こういった地域で古墳研究と風土記研究をどのように統合しているのか、現地の研究者から助言を仰ぎ、この種の研究が遅れている常陸の研究を前進させたい。
|