研究課題/領域番号 |
16H03517
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研究機関 | 九州歴史資料館 |
研究代表者 |
加藤 和歳 九州歴史資料館, 学芸調査室, 研究員(移行) (80543686)
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研究分担者 |
今津 節生 奈良大学, 文学部, 教授 (50250379)
桃崎 祐輔 福岡大学, 人文学部, 教授 (60323218)
重藤 輝行 佐賀大学, 芸術地域デザイン学部, 教授 (50509792)
辻田 淳一郎 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (50372751)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | X線CT / 三次元デジタルデータ / 馬具 / 有機物 / 構造技法解析 |
研究実績の概要 |
本年度は3年目であり、整備してきた研究資源のまとめを始め、遺物埋納坑の復元に向けた検討を行った。まず、出土状態をデジタル計測技術により立体的に可視化できる「埋蔵空間情報解析アプリケーション」を利用し、遺物の「位置情報」「内部構造」、有機物等の「各種痕跡」を把握し、必要な情報を確認、収集、整理した。これにより馬具の器種ごとの配置を把握し、埋納の傾向を検討した。また、個別の遺物については、金銅製歩揺付飾金具(雲珠)、金銅製心葉形鳳凰文杏葉の構造技法解析につとめ、特に繊維、革等有機物の遺存状況の把握と記録を進めた。前者は金銅板の裏面にあたる部分に革帯の痕跡および漆と仮定できる黒色物質を確認し、後者は、表面および裏面に平織の織物をはじめ、構造が違う数種類の織物の存在を確認した。 関連研究として、鋳造品の構造技法研究に資するため、以前、行った銅合金の溶解実験により得られた、復元銅鏡、取鍋および付着物を対象に、X線CTスキャナによる調査を行い、実験による復元品・生成品と復元の基になった出土遺物とを比較した。結果、鋳造時に生じる痕跡、付着物が生じる原因について推定できた。その他、金属と有機物が付着する遺物のX線CT調査で金属に有機物が付着する状態の把握を進めた。 また、ワークショップ「船原古墳出土馬具・武器・武具の検討」を開催し、遺物の整理、X線CTによる調査成果の報告と、遺物の実見により、構造技法や流通、交流などに関する検討を行った(参加者30名)。 そのほか関連資料調査として、福井県十善の森古墳他3遺跡、群馬県金井東裏遺跡、福岡県沖ノ島、宮城県合戦原遺跡、奈良県珠城山3号墳、同植山古墳の出土品を実見し、各種情報を収集した。 研究成果は、日本文化財科学会第35回大会(於:奈良女子大学)、別府大学講演会「文化財の修復と文化財科学の世界」にて発表し、報告書1冊、論文・報告4本を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出土状態をデジタル計測技術により立体的に可視化できる「埋蔵空間情報解析アプリケーション」が利用可能な状態になったことで、遺物埋納坑全体の把握が可能になり、出土状況の理解が深まった。また、遺物のクリーニングが進捗し、付着有機物の遺存状態を観察できる状況になった。このことで情報が蓄積され、調査の進捗をみた。 また、ワークショップの開催により、研究を進める上での課題が抽出され、最終年度に向けた指標を形成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
整備してきた研究資源を整理し、まとめる作業に入る。そのためにクリーニングが一段落した研究対象遺物は、引き続き、デジタルマイクロスコープ、蛍光X線分析装置等を利用し、構造技法、材質の調査を進め、研究データの精緻化を進める。また、「埋蔵空間情報解析アプリケーション」により、埋納時の復元データの解析、作成を進める。 そして必要に応じて、関連遺物調査やCTデータの解析手法に関する調査を行い、情報を補強する。 また、昨年度同様、ワークショップを開催し、遺物埋納坑に関する議論を行い、復元に向けた検討を行う。 得られた成果は、日本文化財科学会等の学会で発表を行い、最終的に報告書にまとめる。広く一般に対しては、企画展を開催し、図録を発行することで公開する。
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